活動報告
情報
目次
- 「持続可能で魅力ある地域社会を」第14回千葉県地方自治研究集会を開催(2024.09.07)
- 第16回定期総会と記念講演会を開催(2024.06.29)
- 「ベーシックサービス論~財政を鋳直し、社会のあるべき姿を構想する~」をテーマに講演会を開催(2024.03.16)
- 「国際情勢と日本の外交のあり方」をテーマに講演会を開催(2023.06.10)
- 「地方分権改革の現状とこれから~行政法学者からみた到達点と課題~」をテーマに講演会を開催(2023.03.04)
- 第13回千葉県地方自治研究集会 「住み続けられる活力のあるまちづくり」をテーマに開催(2022.09.03)
- 「政治と官僚 ~権力者と役人のあり方を考える~」をテーマに講演会を開催(2022.06.18)
- 「コロナ禍と地域医療のこれから~都道府県主体の改革の行方~」をテーマに講演会を開催(2022.03.05)
- 「地域共生社会をどう実現するか~ポスト・パンデミックの社会像~」をテーマに講演会を開催(2021.06.26)
- 講演会延期のお知らせ(2021/02/03)
- 「新型コロナ感染症と地方自治」をテーマに講演会を開催(2020.10.31)
- 「自然災害と防災」をテーマに第12回千葉県地方自治研究集会を開催(2020/09/05)
- 講演会中止のお知らせ(2020/06/09)
- 講演会延期のお知らせ(2020/03/03)
- 設立10周年記念講演会・レセプションを開催(2019/11/09)
- 「市民が進める自治体の条例づくり ―人権と福祉の事例を中心にー」講演会の開催(2019/06/22)
- 「災害列島の中の高齢者と防災」講演会の開催(2019/03/02)
- 2018年度フィールドワーク市原南部地域の地域起こし等を視察(2018/11/21)
- 「公共施設・インフラの老朽化と地方財政~住民の安全・安心を守るために」第11回千葉県地方自治研究集会を開催(2018/09/22)
- 「地域に希望を―人口減少時代の地方財政を問いなおす」講演会の開催(2018/06/23)
- 「日米地位協定と地方自治」講演会の開催(2018/03/03)
- 千葉県九十九里地域で地震防災フィールドワークを実施(2017/11/08)
- 「グローバル化する労働問題と働き方改革」講演会を開催(2017/06/24)
- 「中東世界と日本」講演会を開催(2017年3月4日)
- 「東日本大震災5周年・首都圏大地震をしのぐために」第10回千葉県地方自治研究集会を開催(2016/09/17)
- 「『地方創生』と『一億総活躍』」講演会の開催(2016/06/11)
- 「世界と日本のいま~私たちの生活どうなる~」講演会の開催(2016/02/20)
- 2016年自治体政策フォーラムを開催(2016/01/25)
- 「『地方創生』と地方自治」講演会の開催(2015/06/13)
- 在宅医療・介護の第1回シンポジウム開催(2015/02/07)
- 指定都市・中核市の財政課題等を取りまとめ(2014/10)
- 千葉県在宅医療等研究会キックオフ集会開催(2014/09/27)
- 第9回千葉県地方自治研究集会を開催(2014/09/20)
- 講演会を開催「原発避難者の生活再建へ」(2014/6/14)
- 「自治体政策フォーラム」を開催(2014/5/22)
- 「戦後千葉県労働運動史」を無料贈呈(2014/2/17)
- 高齢者介護めぐって講演会とパネル討論(2014/2/15)
- 自治研センター講演会(2013/10/26)を中止しました
- 「地域医療と少子化対策」事業報告会(2013/6/22)
- 「安倍政権と地方行財政改革の行方」テーマに講演会を開催(2013/6/15)
- **新理事長に宮﨑伸光氏を選出**理事会・定期総会を開催
- 「限界労働」に近づく非正規公務員-急がれる処遇改善-自治研センター講演会を開催(2013/02/16)
- 夕張の鈴木直道市長の講演と対談-第8回千葉県地方自治研究集会を開催
- 「地域医療と少子化対策を考える」講演会とパネルディスカッションを開催(2012/08/01)
- 東庄町の岩田町長と井下田理事長が対談(2012/07/25)
- 「大阪都構想の現状」テーマに講演会開催(2012/06/16)
- 第4回総会で全議案が承認されました(2012/06/16)
- 千葉市長を交えて大都市問題等で対談実施(2012/03/29)
- 「巨大地震と液状化」で定例講演会を開催(2012/02/18)
- 神崎町の石橋町長を表敬訪問(2012/02/03)
- 茂原市の財政分析結果の報告会を開催(2011/11/14)
- 「入札改革」テーマに定例講演会を開催(2011/10/23)
- 定例講演会を開催(2011/06/18)
- 定例講演会を開催(2011/02/12)
- 定例講演会を開催(2010/09/25)
- 定例講演会を開催(2010/06/19)
- 定例講演会を開催(2010/03/13)
- 設立記念講演会を開催(2009/12/19)
new 「持続可能で魅力ある地域社会を」第14回千葉県地方自治研究集会を開催(2024.09.07)
2024年9月7日(土)千葉市中央区「ホテルオークラ千葉」において、自治労千葉県本部主催、一般社団法人千葉県地方自治研究センター共催、連合千葉後援による第14回千葉県地方自治研究集会を開催しました。
改善の兆し見えない人口減少の歯止めと東京一極集中の是正
今回は「自治の力を回復し、豊かな地域社会を創る」をテーマに、東京都立大学人文社会学部教授山下祐介氏をお招きして、「地方創生10年を検証する~国策の失敗と地域の持続可能性」と題した基調講演を行いました。2014年5月に日本創成会議(座長:増田寛也)が、2040年までに全国の市町村の約半数にあたる896自治体が消滅する可能性があると警告する「消滅可能性都市」リスト(通称「増田レポート」)を発表してから10年が経過しました。
その間、政府の地方創生の取り組みが全国で進められましたが、政府の掲げた人口減少の歯止めと東京一極集中の是正につい て は改善の兆しすら見えません。講演で山下教授は「人口減少の正体は東京一極集中にある」と喝破されました。なぜなら、東京都の合計特殊出生率は全国最低の0.99であり、人口を消費するだけで再生する力がないことを裏付けています。
小さな自治体から始まった給食費の無償化等の動き
他方、小さな自治体から始まった子どもの医療費補助や保育料の無料化、給食費の無償化(千葉県で最初に無償化したのは県内人口最少の神崎町)、高校・大学の授業料無料化の動きは社会全体で子供の成長に責任を持とうという意識が醸成されるきっかけとなりました。さらに、この10年で明確になってきたのが首都圏など大都市圏から地方、村落などへの積極的人口移動です。ふるさと回帰支援センター(東京都千代田区有楽町の交通会館にあるNPO法人-団塊世代の地方移住を支援する目的で設立された)が長年取り組んできた地方移住への流れができてきました。
この流れは当初意図した定年退職者だけでなく、子育て世代にも波及しています。地方移住は結婚や子育てを伴うことが多く、明らかに出生力や子育て問題と正の関係にあります。ところが、せっかく若い人が戻ってきても学校・病院・商店・公共交通など、子育てに必要なインフラが過疎化によって、なくなっていることが問題になっています。東京一極集中への流れを止め、地方創生を図るには学校や公共交通の再建維持こそが重要であると指摘されました。
「地方消滅論」は人口減少を背景に強い警鐘を与え、自治体間競争をあおり、東京一極集中を招きました。我が国では少子化の解消はもはや不可能であるとの声もあり、人口減少と東京一極集中には抗うことのできない力が働いている考えることが「社会の罠」になっているというのが山下教授の見立てです。その思い込みから脱すれば、私たちが本来望む暮らしが見えてくるはずだと示唆されました。
「千葉県における持続可能な地域社会づくり」をテーマにパネルディスカッション
基調講演に続き、県内首長・地方議員のみなさんをパネリストとして、「千葉県における持続可能な地域社会づくり」をテーマにしたパネルディスカッションを行いました。コーディネーターには当センター若井理事長、コメンテーターは山下教授、パネリストは越川信一銚子市長・守屋貴子千葉県議会議員(市川市選挙区選出)・川島邦彦酒々井町会議員のお三方です。
銚子市の越川市長は、人口減少と深刻な財政難に苦しみ、隣接する茨城県神栖市(財政力指数1.39は全国第4位)との行政格差にも悩んできたが、風力発電の誘致が決定し、ふるさと納税の伸びもあって、市立病院の再建や住民の足である銚子電鉄への支援を継続しながら、払底した財政調整基金の積み立てもできたとして、財政の危機的状況から脱却しつつあること。
人口減少対策としては「地域おこし協力隊」の活用や小さな企業誘致への取り組みも有効であるとのこと、一方で漁業基地として外国人も増えているが宗教や習慣など課題が多いこと、大卒者が戻ってこないことに加え、千葉科学大学の公立化が新たな問題となっていることなどが報告されました。
酒々井町の川島町議は、明治以降一度も合併を経験したことがない町について、順天堂大学さくらキャンパスの学生や成田空港関係会社の従業員などが居住することによって人口減少に歯止めがかかっていること、アウトレットや東関東自動車道のインターチェンジの開設などの開発行為があり、今後、成田空港の拡張によって人口増や発展が見込まれることが報告されました。ただし、出生率は低く、大都市以外で唯一の「ブラックホール自治体(流入人口だけで増え続ける)」であることが特色です。
千葉県全体について、守屋県議は熊谷県政の第3期千葉県地方創生総合戦略(令和6年度から9年度)の掲げる基本目標、地域経済活性化、多様な人材が活躍できる環境づくり、子育てしやすい社会づくり、暮らしやすい地域づくりや54市町村を知事自ら訪問して、問題を共有化して取り組んでいることや2020年をピークに千葉県も人口減少に転じたことを報告しました。
会場の参加者との意見交換では企業誘致や婚活などについて、熱心な討論がありました。当選1・2回の6名でご参加くださいました東庄町議員の方からも発言をいただき、集会を盛り上げていただきましたことも報告させていただきます。参加者の皆さん、お疲れ様でした。
講演会の内容は、自治研ちばvol.46(2025年2月発行)に掲載されます。
第16回定期総会と記念講演会を開催(2024.06.29)
6月29日(土)午後2時から千葉市「オークラ千葉ホテル」で一般社団法人千葉県地方自治研究センター(理事長 若井康彦)の第16回定期総会が開催されました。若井理事長のあいさつのあと、来賓の自治労千葉県本部平野副委員長、立憲民主党田嶋要衆議院議員の祝辞がありました。
その後、議案審議が行われ、佐藤晴邦事務局長から第1号議案2023年度事業報告及び第2号議案2023年度決算報告が、太田健介監事からは2023年度監査報告があり、第1号第2号議案とも全会一致で承認されました。続いて、第3号議案2024年度事業計画案及び第4号議案2024年度予算案が審議されました。
佐藤事務局長は両議案について、「国の一般会計予算が昨年度に続き、110兆円を超える大規模なものとなり、その歳入の30%が公債に依存しており、歳出の4分の1が借金の返済にあてられている。こうした中で財源の裏付けを確認しつつ、地域住民の安心安全を確保する公共サービスを復権・再生することが重要との認識のもとに政策の研究・検証、地方自治に関する情報を発信し、新しい公共サービスのあり方について政策提起していくとして、①千葉県における地方移住に関する調査研究、②千葉県東部・南部の太平洋に面する地域における実効的な地震津波対策に関する調査研究に取り組んでいく。さらにこれまでどおり、講演会・学習会の開催、広報活動などを行う」と提案説明しました。両議案とも全会一致で可決されました。
第5号議案の役員の選任については、太田監事が退任し、代わりに綿貫裕也自治労千葉県本部財政局長が選任されました。なお、会員から最近の外国人労働者や留学生の就労問題が深刻化していることから、外国人の権利問題について調査・研究を求める要望がありました。
沼尾波子氏が「地方税を取り巻く改革動向と自治体税財政」をテーマに講演
総会終了後には「地方税を取り巻く改革動向と自治体税財政」をテーマに沼尾波子東洋大学教授を講師にお招きし、講演会が開催されました。
講演で沼尾教授は、「地方分権が始まって四半世紀が経過したが、地方創生が目標とする地域独自の行財政運営よりも地方では中央頼みで、近隣自治体と同等な行政サービスを享受する志向がある。独自の地域づくりのために特別の負担をするようなことがあまり見られず、税負担についても横並びが当たり前といった傾向がみられる」と税に対する地方の横並び意識に触れました。
税の性格として「地方税は自治体の歳入の根幹を占める重要な財源(自主財源)で地方自治を支えるものであるが、税と同様に共同の負担である社会保険料や公共料金と異なり、負担に対する見合う給付が確約されていない。そこに地方独自の政策に伴う負担増の合意が難しい」と税の負担に対する住民理解の困難さを指摘しました。
また、「人口減少社会に移行して、持続可能な地域づくりが求められているが、地方創生も思うに任せず、地方分権が不十分なままの状況下で、分権に逆行するようにも思われる今国会における地方自治法の改正が行われた。大規模災害への対応を理由とする集権化、デジタル化の推進による全国標準化・共通化の要請、財政再建と円安バブルによる歳出の拡大、人件費の高騰により指定管理者の受け手がいないなど、新型コロナ後の地方行財政を考えると難題が山積している」として、1.地方財政の現状と地方税、2.地方税の偏在是正と財源保障、3.自治体の独自課税、4.関係人口と地方税、5.地方税務行政のデジタル化(eLTAX)について、最近の動きを解説していただきました。
まとめとして、「自治体に期待される機能と役割は増大する傾向にあり、財政支出も増大する。地方税は地方財政の根幹を支えており、重要な役割を担っている。『東京一極集中』に代表される税源の偏在に対して、交付税や譲与税への依存割合が強まり、課税自主権が活用される範囲は限定的となり、『ふるさと納税』や『宿泊税』など外部や来訪者から応分の負担を求める自治体が拡大している。 eLTAXによる共通納付システムは利便性向上に資するが、自治体独自の租税政策はシステム改修の費用を考えると実施しづらくなるのではないか」との見解が示されました 。
今後の動向として、「自治体の財源保障を通じた標準的な行政サービスの確保、事務の標準化・共通化の動きは均質的な自治体を生むことにつながらないか」と危惧が述べられました。他方、北海道東川町(『写真の町』で売り出している層雲峡に隣接する町)の取り組みを紹介され、民間との連携・協働を通して「公共」サービスを模索する新しい動きが出ているとのことでした。
講演後の質疑応答では「地方交付税」、「ふるさと納税」などについて質問が出ました。ふだんは難しいと思って敬遠気味な『地方税』について、分かりやすく説明をしていただき、有意義な時間を持つことができました。
講演会の内容は、自治研ちばvol.45(2024年10月発行)に掲載されます。
「ベーシックサービス論~財政を鋳直し、社会のあるべき姿を構想する~」をテーマに講演会を開催(2024.03.16)
2024年3月16日、千葉県教育会館において千葉県自治研究センターの講演会が開催されました。慶應義塾大学経済学部教授である井出英策先生から「ベーシックサービス論~財政を鋳直し、社会のあるべき姿を構想する~」をテーマに講演を受けました。先生が提唱するベーシックサービスについて、現在社会の根源に関わる問題点の提起を含め、熱く語っていただきました。講演の主要な論旨は次の通りです。
日本は自己責任の社会
日本の社会保障は一見すると豊かだが、現役世代の取り組みは貧弱である。働けない、貯金が出来なくなったら即絶望の淵にたたされる。日本は、自己責任の社会であり、政府は助けてくれない。平成の時代に日本の一人当たりのGDPは世界4位から26位に低下した。いまや日本の経済は発展途上国の一歩手前の状況となっている。運が悪ければ、誰でも絶望の淵に立たされる可能性があるのが今の日本だ。
弱い立場の人に配慮が成立しない社会を、私は「分断社会」と呼んでいる。分断社会は格差を是正する気のない財政をつくる。こんなみっともない社会をこのままにしておいてはいけない。終止符を打つのが私たちの責務だと思っている。世界価値観調査(World Values Survey)では、「国民みなが安心して暮らせるよう国は責任をもつべき」という質問に賛成する人は76%となっている。困っている人を助けようと訴えても今の日本人の心は動かないが、「自分を含めた国民みな」をなんとかしようというと8割弱が賛成する。
必要とするサービスを全ての人に無償で提供することが重要
過去にM.Castellsという学者が「不平等はサービスへの接近可能性と利用にかかわって生じる新しい社会的分裂の中にあらわれる」と言っている。貧しいから病院、学校などに行けない、そんな社会が不平等だという意味だ。格差が問題ではない。医療、介護、教育など必要とするサービスを全ての人たちに無償で提供することが重要であり、そういう社会を作ることが私の提唱するベーシックサービスの基本理念だ。
日本では、生保が必要な人の15%しか利用していない。他者から施されることを屈辱と考えるのが日本社会だ。だから全ての人たちにサービスを提供することによって、その屈辱から解放することができる。一方で、世の中にはどんなに頑張っても働くことができない人が存在する。この人たちには、単なる「最低保障」から「品位ある最低保障」(DecentMinimum)が必要だ。日本では、「品位ある最低保障」だけ訴えても成立しないから「ベーシックサービス」によって、全ての中間層を将来不安から解放することにより、弱い立場の人に対して優しさが取り戻せる。「ベーシックサービス」と「品位ある最低保障」を両輪にして人間が人間らしく生きられる社会=ライフセキュリティの社会が到来する。ベーシックサービスを無償化していけば生活保護が無くなる。
なにがベーシックサービスかは、私達の議論による。議論は重要である。議論が成立しなければベーシックサービスは成立しない。ベーシックサービスは、社会を革命的に変えるということを理解してほしい。権利を保障することによって格差を縮小できる。しかし、格差を縮小することが目的ではない。人間らしく生きられる社会を保障することによって結果的に格差を縮小することができる。
増税を語るのは未来の声に応答する責任
私の提唱するベーシックサービスが信頼のメカニズムを築くのに一番重要なのは「全員に給付」することだ。これで制度に対する不満も無くなり、制度も簡素化でき、税収が増える。他者を疑うよりも信じたほうが、生活を保障する社会に変化する。
私の思想的原点はハンス・ヨナスにある。一番好きな言葉は「汝の行為がもたらす因果関係が、地球上で真に人間の値する生命が継続することと折り合うように、行為せよ」。地球上で責任が果たせるのは人間しかいない。であるからこそ、人間は責任を果たすために存続しなければならない。まだ生まれていない子供も含めて、未来の声なき声に応答責任がある。私が増税を語る前提には未来の声に応答する責任がある。これが私の<点>である。
だから私はMMT(現代の貨幣理論)という乱暴な議論には、徹底的に闘う。MMTは無制限な国の借金を認めている。インフレは必ず生じ未来の増税に繋がる。人類の歴史の中で革命が幾度となく起きているが、イギリスの権利章典、フランスの人権宣言、アメリカの独立宣言のいずれを見ても税の廃止を求めるものではなく、税の使途の決定権を求めている。税の正しい使い道を議論し、そのために公正な税の負担を議論する財政民主主義が求められている。私たちはあくまでも税を前提にして、あるべき社会の姿を語っていくことが重要だ。
財源論から逃げない、人々を説得する言葉を持つ
大学、医療、介護無償化、看護、介護、保育関係者の給与引き上げ、生活扶助、失業給付の拡充、住宅手当の補助などライフセキュリティの実現には、消費税6%強の増税で実現できる。消費税6%強を引き上げたとしても、国民負担率は主要先進国の平均程度だ。このモデルでは、未来に備えた貯金を税として政府に収めるだけで負担増にはならない。莫大な無駄な貯蓄をしているのが日本社会だ。ヨーロッパは、租税負担率は高いが成長している。
消費税5%減税は、私には理解し難い。5%減税で、低所得者には年間8万円ほど戻るが、富裕層には年間23万円もかえる。これなら全員に10万円配る特別定額給付金のほうがまだましだ。あるべき姿の社会を考え、財源論から逃げない、人々を説得する言葉を持つことに尽きる。
一番福祉が手厚いのが仏、そして独、スエーデンは3位に落ちた。米が猛伯している。そして、英、日本だ。自公政権が、消費増税、幼保・低所得層の大学無償化を行った。バイデン政権は、全ての3,4才児の幼保無償化、全ての米国人の2年制州立大学無償化を打ち出した。英国ボリス政権は、全ての人たちの介護自己負担の制限を提案した。これらの施策は増税とセットだと明言している。
みっともないバラマキ政策を実施しているのは、日本だけだ。バイデンは「過去数十年とは異なり、米国の家庭の生活を楽にするための政策は、全ての人を巻き込むことに重点を置かなくてはならない」と言っている。米国は、完全に変わってきている。今からでも遅くない、立憲民主党、国民民主党は、自らの拠って立つべき思想、政策を世に問うべきだ。
講演会の内容は、自治研ちばvol.44(2024年6月発行予定)に掲載を予定しています。
new 「国際情勢と日本の外交のあり方」をテーマに講演会を開催(2023.06.10)
今回の講演会はウクライナ情勢、また東アジアにおける台湾有事など、世界が戦争の時代に突入したともいわれる中、平和の時代をとりもどすには、世界がどのような対応をなすべきかを「国際情勢と外交」をテーマにして開催されました。講師にお招きした水口章先生(千葉敬愛大学国際学部教授)は中東問題の専門家としてメディアにたびたびご出演されております。
先生はまず初めに2023 年の国際政治・経済のポイントとして
1)ウクライナ戦争長期化するか
①国際社会の和平努力、②NATO のウクライナ支援
2)世界経済の景気後退はどこまで深刻か
①景気後退、②インフレのピークアウト、③歳出拡大の影響、④エネルギー価格の高止まり、⑤サプライチェーンの整備(国際南北輸送回廊の活用)
3)市民運動は活発化するか
①体制崩壊、②抗議活動
4)気候変動対策(グリーンエネルギーへのシフト)は進むか
①異常気象、②生物多様性、③農産物の不作
という4点について、問題意識を述べられ、具体的な状況をもとに提起されました。
また、最近の国際政治・経済の主要動向 としては 、新冷戦の動き――米国 vs.中国・ロシア について説明されたのちアメリカ、ロシア、中国の現状認識、世界経済の景気後退予測について語られました。
次に2023 年の日本のポイントとしては
1)「平和」を語りつげるか
①核兵器廃絶、②専守防衛、③日米地位協定
2)安全保障に欠かせない近隣外交をどうするか
①中国、②北朝鮮、③韓国
3)日本の景気は回復するか
①金融政策の変更、②物価対策、③産業振興、④賃上げの成果、⑤人手不足の深刻化(働き方改革、外国人労働者、人材育成)
4)社会保障政策は弱体化するか
①少子高齢化対策、②増税と分配、③財政再建、④地域格差、⑤教育改革、⑥ 地域の支え合い
5)エネルギーの安定・安価・安全をはかれるか
①温暖化対策、②原子力発電
6)デジタル社会の実現をどうはかるか
①生成 AI の規制、②ライフ・スタイルの変化、③人材育成
の問題意識のもと外交、経済についての現状認識や予測について提起されました。
最後に「歴史に見る日本外交」について、第二次世界大戦終結後の日本外交の歴史について説明され、そののち日本外交の基本理念は憲法前文の精神:①平和主義、②自由と民主主義、③国際協調主義④人類への貢献であるとして、現在の日本の外交への懸念を示されたのが印象的でした。
「地方分権改革の現状とこれから~行政法学者からみた到達点と課題~」をテーマに講演会を開催(2023.03.04)
2023年3月4日、千葉県教育会館において千葉県自治研究センターの講演会が開催されました。今年が第1次分権改革(1993年から2000年)から30年になることに因み、地方自治総合研究所所長の北村喜宣先生(上智大学教授)から、「地方分権改革の現状とこれから~行政法学者からみた到達点と課題~」をテーマに講演を受けました。
2000年4月に、関連法令を一挙に改正する「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」が施行されましたが、これは1993年6月の国会における「地方分権の推進に関する決議」が出発点となっています。この地方分権改革推進法にともなって、国税から地方税への税源移譲、国から自治体への権限移譲等が一定進められてきましたが、いまなお「未完の分権改革」であり、改革は現在進行形となっています。
北村氏は、総務省の自治大学校や自治体において、長らく「政策法務」という科目の研修講師を務めていますが、この数年、「政策法務」研修の受講生に大きな変化があるように感じているそうです。それは、「分権改革を知らない職員たち」が増えてきていることで、自治体現場の現状に危機感をいだいているとのことでした。講演では、この「政策法務」の講義の内容を一部紹介しながら、これまでの地方分権改革の経緯や到達点を踏まえて、残る課題と改革を継続していくことの重要性を明らかにしていきます。講演要旨は、こちらをご覧ください。**講演要旨はこちらをクリックしてください**
第13回千葉県地方自治研究集会
「住み続けられる活力のあるまちづくり」をテーマに開催(2022.09.03)
2022年9月3日、千葉県地方自治研究集会が、千葉県教育会館において自治労千葉県本部主催・千葉県地方自治研究センター共催で開催されました。本年の集会は、「住み続けられる活力のあるまちづくり」をテーマに、千葉県における地域おこしや地方移住の問題に焦点をあてて、単組報告、基調講演、パネルディスカッションが行われました。
集会は、13時30分に開会し、自治労千葉県本部の伊藤成司委員長の主催者挨拶の後、香取市職から小江戸情緒が色濃く残る香取市佐原地区の街並み保存の取り組みが報告されました。基調講演は、國學院大學観光まちづくり学部准教授の嵩和雄(かさみ かずお)氏から「地域づくりとしての地方移住」と題して、最近注目を集める地方移住の全国的な取り組み状況や課題等について、講演していただきました。
若い世代の移住希望が増加
嵩氏は、「移住」という言葉を最近よく耳にするが、実は新しい話ではなくて、1960年代から1970年代の学生運動に関わった団塊の世代が地方に移住して有機農業を始めたという動きに冒頭ふれました。その後も、脱サラしてペンションを経営する、経済的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさを求めて農山村に移住する等の動きが続きましたが、2000年代初頭から大量退職しはじめた団塊の世代が積極的に移住する動きが出てきたとのことです。
とりわけ、2008年のリーマンショック以降、中高年ではなくて、若い世代が地方に目を向け始めたことが特徴的な出来事で、2014年から政府が進めた「地方創生」が移住の動きをさらに押し上げ、若い移住希望者が増加し続けているとのことです。嵩氏が所属していたふるさと回帰支援センターは2002年に立ち上がっていますが、嵩氏が入った2009年時点では、相談員のいる相談窓口は福島県1件でしたが、今では44道府県となり、2022年度から千葉県もようやく相談員を置く相談窓口を設けています。
なりわい、住まい、コミュニュティ、3つの課題
嵩氏は、移住の課題として、なりわい、住まい、コミュニュティの3つをあげました。 一つ目の仕事については、相談者の6割強は、「企業への就職」を希望していますが、東日本大震災・コロナ禍の影響もあるのか、農業や自営業を希望する人も増えているとのことです。実際に、都市部にみられるような社会起業家が農村でも目に付くようになり、大きい仕事をやりたいというよりも、小商いを営みながら地域の人たちと一緒に何かをやっていきたいという人が増えているようです。地域の「なりわい」を継ぐという「継業」も増えており、千葉県鴨川市のこうじ屋を「孫ターン」で継いだ事例が紹介されました。 二つ目の住まいですが、移住希望者の多くは、中古で戸建ての賃貸住宅を望むそうです。しかし、希望する物件を地方で見つけるのは、そう簡単ではなく、その要因として所有者に空き家の利活用の動機がないことをあげています。全国の約1200の自治体にある「空き家バンク」をみても、設立当初は多くの物件がありましたが、空き家が埋まっていくと、掘り起しがうまくいかず、登録物件が少なくなっているそうです。そのような中で、NPO等の民間団体が所有者から無償で借り受けて、移住者に貸すサブリースという仕組みが有効で、高知県梼原(ゆすはら)町ではすでに50棟ほどがサブリースしているとのことです。
コミュニティの対策が一番の課題
三つ目が一番大きな問題で、移住者と受け入れる地域・集落をつないでいく、つなぎづくりの中間支援組織の有無が移住の成否のカギを握っていると嵩氏は語ります。ふるさと回帰支援センターの相談員は、相談に訪れた移住希望者がその地域・集落とあわないと判断した場合は、その旨を本人にキチンと話すそうです。世話人・コーディネーター的な中間支援組織が存在する地域・集落は、移住者と地域のつながりがうまく築けて、結果として定住率が増すのではないか、とのことでした。 嵩氏が非常に注目していて、研修の際に必ず紹介するのが「集落の教科書」です。移住政策はプラスの部分しか伝えないことが多いが、大切なのはマイナスのこともキチンと伝えること。地域・集落に入って際のルール、特に強制力が強く、認知度が低いマイナーなルールを教えてあげることによって、トラブルを減らすことが肝心と指摘しました。
地域づくりとしての「移住施策」
最後に、嵩氏は、移住施策を地域の価値を高めるための取り組みとして、地域づくりとして考えてほしい、と述べました。いわゆる「よそ者」である移住者が入ってくることによって、地元の人々が地域の価値を都市住民の目を通じて、見つめなおす効果を持つ。住みやすく、居心地のよい場所をつくり、出ていった子どもが戻りやすい地域づくりが重要と締めくくりました。
第2部 パネルディスカッション~千葉県における持続可能な地域社会づくり~
基調講演後、「千葉県における持続可能な地域社会づくり」をテーマに、パネルディスカッションを開催しました。コーディネーターは、当センターの若井康彦理事長が務め、パネリストとして、銚子市ジオパーク・芸術センター所長の赤塚弘美氏、NPО法人いすみライフスタイル研究所理事長の高原和江氏、鴨川市議会議員の福岡あずさ氏、コメンテーターに基調講演講師の嵩和雄氏に参加していただきました。 冒頭、司会の若井氏は、「本日は、外房地域、いわば千葉県の地方圏の三つの市から、女性のパネリストにお越しいただいた。移住の問題は、意外と女性が主導権を持っており、実際に地域で活躍されている皆さんの具体的な活動をお聞きしたい」と述べ、まず各パネリストから自己紹介を兼ねて、お話を伺いました。
自然の中で子育てしたいと考えて移住
最初にマイクを握った福岡氏は、東京都武蔵野市生まれ。35歳の時に縁あって横浜のシェアハウスに住み、その後、結婚し、息子が生まれました。夫婦で話し合って、「都市ではなくて自然の多いところで育てたいね」ということになり、全国を探し回り、2020年に鴨川市の集落にある今の家にたどり着いたそうです。
福岡さんは、移住2年目の2022年5月の鴨川市議会議員選挙に立候補して初当選しました。立候補した理由を次のように語っています。福岡さんの息子は1歳まで横浜で育ち、通っていた「森のようちえん」というのは、雨が降ってもかっぱを着て公園で遊び、「どろどろになっても全然いいよ」というような保育の中で過ごしたそうです。
鴨川に移住して、公立の保育園に通いましたが、横浜ではどろどろになった洗濯物をいっぱい持って帰って来ていたのが、あまり汚れて帰ってこなくなったとのこと。「結構、室内で遊んでいることが多いですよ」という保育士の話を聞いて、「まわりにたくさん自然があるのに、なぜ子どもを外で遊ばせられないのだろう」と一人の母親として、ふと考えてしまいました。また、給食にしても、千葉県は農産物がとれるのに、地元の食材がほとんど使われていないことを知り、なんとか変えられないかと思ったそうです。
地域の人とのお茶飲み話で、「市議会議員になれば、スピード感をもって変革できるよ」といわれ、普通なら断るところを「私の魅力をみて声をかけてくれた」と前向きにとらえ、立候補を決意したとのこと。周りからは、「絶対だめだろう」といわれましたが、671票を獲得し、見事当選しました。移住者が増えていくように、千葉県の魅力を発信していきたいと抱負を語っていました。
銚子の文化遺産を活用した街づくり
赤塚さんは、大学生のことから埋蔵文化財の発掘等にかかわり、銚子にも研究テーマとしていた遺跡があったことから、銚子市に就職。文化財の仕事に携わって30年を経過したとのことですが、最近では文化財の保護だけではなく、活用に力を入れているそうです。銚子市では、「保存と活用」を車の両輪として、令和2年に銚子市文化財保存活用地域計画を策定して、文化庁の認定を受けました。 赤塚さんが所属する文化財ジオパーク室の柱の事業の一つが、銚子資産活用事業で、銚子市の歴史・文化・自然などに関係する銚子の資源・資産を「銚子資産」と位置づけて、皆で守っていこうというもの。歴史的な資源を使って、観光で地域に外から人を呼び込み、その活動を通して、なるべく地域の人たちを巻き込みながら、保存と活用を進めていくねらいがあります。
もう一つの事業が、銚子ジオパーク活動。銚子市は、千葉県内でも一番古い地層が比較的簡単に見られ、犬の形をした犬岩や、市内で一番高い愛宕山が、大体2億年ぐらい前の地層だそうです。この地質資源を生かしながら、大地の成り立ちと人々の暮らしを考え、そこに携わる文化財の銚子資産を守っていこうという形で、ジオパーク活動を展開しているとのことです。
銚子の魅力を感じてもらって、たくさんの銚子のファンをつくっていきたいと話していました。
いすみ市のNPOを通じたまちづくり
高原さんは高校までいすみ市で育ちました。大学への進学を機にいすみ市を離れ、そのまま都内に就職しました。しかし、両親がいすみ市で田畑を守りながら暮らしていることもあり、自然豊かで空も広い自然環境に恵まれたふるさとで暮らしたいという思いが徐々に強くなりました。野菜ソムリエの資格を取り、13年ほど前にUターン。知り合いや同級生とも出会えたりするようになり、何かできることはないかと調べているうちに、いすみ市の「地域プロモーション室」にメールしたところ、市の担当者がNPO法人「いすみライフスタイル研究所」の活動しているメンバーに会わせてくれて、その場で入会を決めたそうです。
このNPO法人は15年目を迎えますが、もともとは合併前の旧大原町、旧夷隅町、旧岬町の商工会の青年部のメンバーが中心となって、いすみ市の合併を機に、勉強会などを重ねたそうです。活動をさらに進めていくために、市役所に地域プロモーション室をつくって、それと同時にNPO法人を設立するという経緯でできています。 当時、千葉県が「NPO立県ちばの実現」を掲げ、地域住民による自発的な活動の促進に力を入れていたことも追い風となりました。その中で、最初の柱に掲げたのが「移住・定住促進」で、相談窓口は、ずっと行政と連携しながら行っているので、先ほどの嵩先生が話された基調講演の内容は、日々リアルに感じているとのことでした。
わくわくするような地域づくりを
その後、パネルディスカッションは、パネリスト同士の意見交換、会場からの質問等を受けながら、進行しました。最後に、コメンテーターの嵩氏から「移住はまちづくり一つの手段。移住者を受け入れる地域の側が、どんな地域にしていきたいのか。また、移住する側は、移住によって、どんな豊かな人生を送りたいのか。それをかなえる一つのツールが、移住だと思う」と述べ、3名のパネリストに「わくわくするような地域づくり」を実践していただきたいとエールを送り、パネスディスカッションを終了しました。
講演会の内容は、自治研ちばvol.40(2023年2月発行予定)に掲載を予定しています。
「政治と官僚 ~権力者と役人のあり方を考える~」をテーマに講演会を開催(2022.06.18)
2022年6月18日15時から、定期総会後の記念講演会を千葉県教育会館において開催しました。現代教育行政研究会代表、前文部科学事務次官の前川喜平氏を講師に「政治と官僚」をテーマに、38年間の公務員生活を振り返ってお話をしていただきました。
面従腹背の38年間
前川氏は、教育・学術・文化という分野の仕事が性に合っていると思い、旧文部省を選んだとのこと。しかし、選ぶ時にはちゅうちょしたそうです。というのも、大学で「家永裁判」「学テ裁判」等の教育裁判を勉強する中で、国の主張には問題があり、個人的に賛成できないという気持ちはずっと抱いていて、自分の思想・良心とは異なる原理・原則で動いている組織に入っていくことを考えたとのこと。就職後、自分の腹の中で考えていることと、組織の中で行っている仕事というのは、一致することはごくごくまれで、38年間ずっと面従腹背していたとのことでした。
講演では、地域医療構想の背景や経緯、地方における議論の動向・改革の行方等を中心に、利害関係が複雑に絡む医療制度改革の課題について詳しく語ってもらいました。
納得できたのは100のうち三つほど
やりたい仕事ができたのは、100のうち三つぐらいしかなかった、むしろ、やりたくない仕事をさせられたことの方が多かったような気がすると前川氏は語っています。数少ない一致したケースとして二例をあげ、その一つは、「奨学給付金」制度で、高校生のための2014年度渡し切りの給付金を、2014年度につくったことです。
二つ目は、沖縄の八重山諸島の教科書採択で、八重山諸島には石垣市、竹富町、与那国町という三つの自治体で、共通の教科書を採択しなければならないという「共同採択制度」という縛りがある中で、石垣市・与那国町と竹富町の意見が割れるという問題が発生しました。
当時、初等中等教育局長だった前川氏は、面従腹背をしつつ、上からの圧力をうまくかわして「共同採択制度」の改正を行い、竹富町が望む教科書採択が実現しました。
「法匪」にならないこと
前川氏は、公務員として仕事をしていくうえで大切ことを二つ示しています。一つ目は、組織の中にはいるけれども、その前に自分は独立した人格を持った、自由な精神を持った一個人であり、主権者である一国民であり、自治の担い手である一市民であるという意識を失わないということ。二つ目は、「法匪」すなわち「法を盾にとる悪いやつ」にならないこと。杓子定規に対応するのではなく、自分の最大限の裁量の中で、そのルールを一番人間的な形で解釈・運用することの重要性を強調しました。
「立身出世型」公務員が横行
官僚を三つのタイプにわけて、前川氏は見ていたそうです。 タイプ1は、「世のため、人のため型」あるいは「公益志向型」。使命感とか正義感にあふれていて、世のために、人のために働くことに喜びを感じるタイプだが、そう多くはない。
タイプ2は「可もなく不可もなく型」、「安定志向型」。
タイプ3は、「立身出世型」「権力志向型」で、出世競争に勝ち残って、組織の中で何とか少しでも上に行こうとし、多分、佐川さんはこのタイプとのこと。
このタイプ1の公務員が生きづらくなっているのが今の世の中で、各省庁トップの長官、次官等を占めている官僚たちは、ほとんどがこのタイプ3の「立身出世型」「権力志向型」になっているのではないかと指摘しています。
安倍政権・菅政権の9年間に、政治と官僚の関係がものすごくゆがめられ、とりわけ、当時の菅官房長官・杉田和博官房副長官のラインは最強最悪のコンビと批判。このコンビは、自分たちの気に入った人間は取り立て、気に入らない人間は外す・飛ばすで、縦横無尽に官僚の人事を操ったことにより官僚を下僕化し、完全にコントロールした。そのことによって「加計学園問題「森友学園問題」など権力の私物化・政治の私物化が可能となったと述べています。
経産省中心から旧大蔵省中心へ
政治家が腐ると、各役人の上層部も腐ってくるし、それはどんどん下に降りていく。疲弊して、失望して、退職するという若手官僚もふえ、仕事から逃避する、あるいは悪事に手を染めるといった若手官僚も出てきている。タイプ1の「世のため、人のために尽くす」という公務員が、どんどんどんどん消えてしまって、モラール・士気が落ちていると危機的な状況にあるが、岸田政権に代わって、霞が関の秩序は経産省中心から財政規律を重んじる旧大蔵省を中心としたものへもとに少し戻りつつあると話されました。
腐敗した権力者の周りにイエスマンばかり群がる「政治と官僚」の話を聞きながら、改めて日本の政治のあり様を変革していく必要性を強く感じさせる講演会でした。
講演会の内容は、自治研ちばvol.39(2022年10月発行予定)に掲載を予定しています。
「コロナ禍と地域医療のこれから~都道府県主体の改革の行方~」をテーマに講演会を開催(2022.03.05)
3月5日、千葉県教育会館において千葉県地方自治研究センターの講演会が開催されました。「コロナ禍と地域医療のこれから~都道府県主体の改革の行方~」のテーマで、ニッセイ基礎研究所主任研究員の三原岳氏に講演をお願いしました。
大きく動きだす医療・介護分野の改革
団塊の世代が75歳以上となる2025年にむけ、医療・介護分野の改革が大きく動きだしています。今までの総合病院に大きく依存していた医療・介護提供体制から、地域包括ケアシステムを支えるための在宅医療・介護を一体として提供できる体制へシフトしつつあります。全国の都道府県ではすでに、医療機関からの病床機能報告を踏まえて、病院の病床の機能分化・連携をはかるための地域医療構想がすでに策定されおり、それをもとに医療提供体制等の改革が進められています。
講演では、地域医療構想の背景や経緯、地方における議論の動向・改革の行方等を中心に、利害関係が複雑に絡む医療制度改革の課題について詳しく語ってもらいました。
地域の実情に合わせた改革が必要
地域医療構想とは、原則として二次医療圏を単位として設定された全国341の構想区域において、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の医療機能ごとに将来の医療需要と病床の必要量を推計し、その地域にふさわしいバランスのとれた病床機能の分化・連携を推進するビジョンとされ、医療計画の一部をなしています。
2017年3月までに都道府県が策定した地域医療構想の全体状況をみると、急性期病床の削減、回復期病床や在宅医療の充実が重視されているが(表)、人口減少や疾病構造の変化などに加えて、人口減少や高齢化の進展のスピードが都道府県ごとに異なる点があり、都道府県を中心とした地域の実情に応じた改革が必要と三原氏は指摘しています。
地域医療構想をめぐる議論は混乱しがち
また、三原氏によれば、地域医療構想には「病床適正化」「切れ目のない提供体制の構築」という2つの目的が混在しているために、地域医療構想をめぐる議論は混乱しがちであり、情報共有も不十分となっている、とのことでした。都道府県の地域医療構想が出そろった後の2019年9月に、経済財政諮問会議を中心に公立・公的病院の再編論議を求める促す意見が強まり、「再編・統合が必要な公立・公的病院」(通称「424リスト」)が公表されたことに対し、首長や現場から強い反発が出され、混乱に拍車をかけることになりました。
総務省が間に入る形で協議の場を開催し、国から財政支援などが約束されたことで、同年12月に地方が「関係正常化」を宣言して一応の終息をみました。経済財政諮問会議など国の議論は「過剰な病床の適正化」を重視する一方で、都道府県は「切れ目のない提供体制の構築」を意識しており、政策の目的が噛み合っていないと、三原氏は混乱状況を説明しました。
コロナ禍で浮き彫りになった医療提供体制の問題点
国と地方の関係は2019年12月に正常化したものの、新型コロナウイルスの影響で議論がストップしてしまいました。コロナ禍の中で、政府は、病床確保に向けて新型コロナ緊急包括支援交付金を兆円単位で計上したほか、診療報酬も繰り返し引き上げられ、医療現場へのテコ入れは十分なされていました。それにもかかわらず、「世界一の病床大国」で医療が逼迫しましたが、三原氏は、その要因としては①医療機関の役割が不明確、②医療資源集中の不徹底、③民間医療機関の受け入れが不十分という3つを指摘できるとし、いずれも地域医療構想の推進に際して話題になっていた論点であり、新型コロナウイルスの問題は医療提供体制の構造的な論点を浮き彫りにした、と述べました。
2024年へ医療提供体制等の改革の動きが加速
三原氏は、今後の動向として、厚生労働省が2019年5月頃から地域医療構想、医師偏在是正、医師の働き方改革を「三位一体改革」と位置付けて、地域医療構想について2024年改定の第8次医療計画で推進方策などを盛り込む予定であること、総務省も公立病院改革のガイドラインを改定する方向性で動いていることを示しました。
2024年4月にむけて、都道府県の医療計画や介護保険事業計画の改定並びに診療報酬・介護報酬の改定が同時に行われます。あわせて、医師の働き方改革として医師の年間残業時間を原則960時間(例外1,860時間)に抑制することも実施され、医師の引き上げ等へ対処する必要性にも三原氏は言及しました。
各都道府県には、複雑に込み入った利害関係を解きほぐし、諸課題を解決してスムーズに地域の実情に応じた医療提供体制等の改革を進める推進役としての役割が期待されています。今後、各都道府県において進められる医療提供体制等の改革議論に対して、県民一人一人がその動向を注視していく必要性を強く感じました。
講演会の内容は、自治研ちばvol.38(2022年6月発行予定)に掲載を予定しています。
「地域共生社会をどう実現するか~ポスト・パンデミックの社会像~」をテーマに講演会を開催(2021.06.26)
さる6月26日、オークラ千葉ホテルにおいて千葉県地方自治研究センターの講演会が開催されました。講師は中央大学法学部の宮本太郎教授。宮本教授は、社会保障審議会・生活困窮者自立支援及び生活保護部会部会長や厚生労働省・地域共生社会推進検討会座長、全国社会福祉協議会理事などを務められています。
現在、コロナが突きつけた課題が山積する中で、地域共生社会をどう実現するかという視点でわかりやすく講演を行っていただきました。また、今講演会もコロナウィルス感染症拡大防止のため、三密対策に充分配慮した開催となりました。
コロナ後の社会のあり方のポイント
まず、宮本氏はコロナ禍後の社会のあり方のポイントを三つ上げました。一つ目は、コロナ禍でもっとも大きな打撃を受けている若年層(とりわけ女性)、不安定就労者など「新しい生活困難層」をどう支えるか。二つ目に、老若男女を問わず、これからの日本社会を支える「元気人口」をいかに増やすか。三つ目に、子育て、介護など「ケア」の価値をいかに高めるか。この3点について、抽象的な課題としてではなく、地域共生社会の具体化の中でこれらを追求していくことが重要である、としました。
"豚の貯金箱"を持てない「新しい生活困難層」
特に、宮本氏はイギリスの経済学者ニコラス・バーが説いている、"豚の貯金箱"機能(社会保険制度)と「ロビンフッド」機能(公的扶助)を取り上げ、日本の社会保障制度の問題点を指摘しました。日本では歴史的に社会保険制度に税金を投入することによって、年金・医療の皆保険制度を早い段階で達成することができたが、その反面、公的扶助に回す税金が相当に制約された。その結果、社会保険制度に加入している正規雇用等が多くを占めた時代は良かったが、社会保険制度に加入できない・していない「新しい生活困難層」が増えた昨今、生活保護などの公的扶助の枠が狭められる中で彼ら彼女らをどう支えるかが問題と述べました。
縦割りを超え、包括的支援を
この「新しい生活困難層」は、低所得不安定雇用層であり、ひとり親世帯や老親・ひきこもり・軽度の「知的障害」をかかえる世帯であるなど、複合的な困難を有していることに問題の根深さがあり、いままでの社会保障や福祉制度の対応では限界が明らかになっているとしました。
宮本氏はこれからの「新しい生活困難層」の支援策として福祉のあり方に触れ、これまでの「福祉」は保護することが目標だったが、これからの「福祉」は元気人口を増やすことが大切。そのためにも従来の縦割りを超え、早期に包括的な支援をめざしていくべきである、と強調しました。具体例として、当時の人口3800人の秋田県藤里町において113人の引きこもりに対して就労支援等を行った社会福祉協議会の「こみっと」支援事業、引きこもりの若者が引きこもったままでホームページを作成する株式会社「ウチらめっちゃ細かいんで」のケース等が紹介されました。
重層的支援体制整備事業の活用を
地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進については、宮本氏も議論に参加され、昨年の社会福祉法改正にともなって、重層的支援体制整備事業が本年4月からスタートしました。
宮本氏は、地域共生社会をめざして市町村が重層的支援体制整備事業をうまく活用することが重要だとして、先進的な自治体の取り組み事例を交えながら、支え手側と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、福祉などの地域の公的サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる仕組みについて説明しました。
コロナ禍が改めて浮き彫りにした「新しい生活困難層」等の日本社会がかかえる喫緊の課題とその処方箋について、説得力のあるわかりやすいお話しに会場の参加者も納得顔で聞き入っていました。
講演会の内容は、自治研ちばvol.36(2021年10月発行予定)に掲載を予定しています。
講演会延期のお知らせ
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、下記の講演会を延期しますので、お知らせします。
- 日 時 2020年3月6日(土)14時30分~
- 場 所 千葉県教育会館本館2階203会議室(千葉市中央区中央4-13-10)
- 講 師 宮本太郎氏(中央大学法学部教授)
- テーマ コロナ後の世界を考える~地域共生社会の実現に向けて~
- 主 催 一般社団法人 千葉県地方自治研究センター
「新型コロナ感染症と地方自治」をテーマに講演会を開催(2020.10.31)
10月31日、「新型コロナ感染症と地方自治」と題した講演会をオークラ千葉ホテルにおいて開催しました。
講師にお招きしたのは、ジャーナリスト(元読売新聞東京本社編集委員)の青山彰久氏。青山氏は編集委員として地方自治・分権改革・地域政策等を担当され、日本自治学会理事なども歴任し、記者の目線と同時に、研究者としての観点から現状への指摘を示していただきました。なお、今回は今年度初の講演会でしたが、感染拡大に配慮し、三密を回避した講演会となりました。
講演の概要は以下のとおりです。
進む地域の分断と孤立化
新型コロナは都市空間を破壊するとともに、地域に分断と孤立化(人々のアトム化)を持ち込んでいる。生活社会においてもコロナ過による解雇、雇い止めはすでに6万人を超えているが、一方でGoToトラベルの利用者が1600万人を突破するなど、失職者との格差拡大が顕著である。また、感染拡大の恐れがあると決めつけ、個人や営業を続ける店舗を攻撃したり、デマを流布する現象が起き、地域の中に潜在的にあった偏見や差別を拡大させる闇の深さをのぞかせている。さらにコロナ過により、妊娠数は大幅減少し、生命誕生へのブレーキがかかっており、逆に減少傾向にあった自殺者は7月以降急増している。
地域住民の暮らしを守るのは自治体の本質的な任務
コロナ禍の中で、中央政府が進める全国画一的な政策が限界を見せつけている。地域で暮らす住民を守るのは自治体の本質的な任務である。今、リアルな現場から生み出される独自の政策が必要であり、それを基に自治体が連携して国を動かしていく必要があると考えている。
1960年代の種々の公害が社会問題化した際、ザル法であった公害関係法制に業を煮やした東京都が法律より厳しい基準の上乗せ規制を条例で制定した。そうした動きに押されて、1年後の1970年12月の公害国会で、14本の公害関連法案が一気に成立した。現場の必要があって、地方自治体が国を動かした輝かしい事例をもう一度思い起こしてもらいたい。
また、民主主義を根幹で支える役割を持つ自治体は、同調圧力や自粛警察、また感染者への一方的な非難などから、人々の権利を守ることも期待されている。コロナ禍において様々な規制が行われたが、よく考えてみると、外出の規制は移動の自由を制限するものであり、イベントの開催の規制は集会の自由の制限である。学校の閉鎖は学問の自由の制限につながっていくかもしれない。このような規制が行われる場合、これらの権利や自由を一時的に行政に預けたというように私たちは考えておく必要があり、規制と権利が緊張関係にあることが大切である。そうでなければ、戦後つくってきた民主主義の制度がみな破壊されてしまうことになるのではないか。
新自由主義的な経済政策では人命は守れない
フランスの歴史家・人口学者のエマニュエル・トッドは「コロナ禍で引き起こされたかなりの部分は、人々の生活を支えるための医療システムに割く人的・経済的な資源を削り、いかに新自由主義的な経済へ対応させていくかに力を注いできた結果だ」「これまで効率的で正しいとされてきた新自由主義的な経済政策が、人間の生命は守らないし、いざとなれば結局その経済自体をストップすることでしか対応できないことが明らかになった」と指摘している。
感染の拡大は分権改革がリストラに読み替えられ、保健所などの予防拠点機能を弱めていたことも要因の一つである。1995年に全国で845か所あった保健所は現在469か所に減少しており、地方分権の流れの中で、感染症などの広域的、専門的機能を都道府県に定め、それを口実にして地域拠点の弱体化が進められた結果である。
このコロナ過で雇い止めなどの狙い撃ちにされたのは非正規雇用者である。日本の多くの企業が、競争力を高めるために人件費を低く抑えるという経営を続けてきた。しかし、働きがいのある人間らしい仕事の場を奪っていくうちに日本経済は立ちいかなくなり、その歪んだ構造をコロナ過が劇的に表している。
生命、環境を守る都市の創造こそがアフターコロナの道
東京圏と中枢都市への人口や経済一極集中も問題である。景気が拡大すると人口流入が加速し、生活の安定や環境保全よりもビジネスが優先される。そのことにより、都市災害には一段と脆弱となり、維持可能とは言えない状態が続いており、地域構造の問い直しが必要である。
これまでの都市計画の原理は「職住分離都市」だったが、コロナ過とテレワークの拡大は、この都市構造がかえって非人間的な都市空間を作っていたことを浮き彫りにしたかもしれない。テレワークにより在宅勤務が進んだことは、人々の働き方や生活を変える可能性を示した。しかし、小さな共同体を強くする反面、人々が小さな世界に閉じこもることにもなりかねず、テレワークには光と影があることも明らかにしている。
また、無秩序な開発は都市への過剰な集中、グローバル化により世界に拡大し、いったん拡大すると対人接触が多い労働者や高齢者など社会的弱者に最も大きな影響を及ぼしている。またグローバル化した現代では、ウイルスは容易に国境を越え、人口が集中する都市で感染が拡大する。今こそ、足元の現実を直視し、人々の生活を支える公共サービスに目を向けるとともに、過剰な集中とグローバル化に依存した構造を見直し、生命、環境を守る都市の創造こそがアフターコロナの道となる。
講演会の内容は、自治研ちばvol.34(2021年2月発行予定)に掲載を予定しています。
「自然災害と防災」をテーマに
第12回千葉県地方自治研究集会を開催(2020/09/05)
9月5日第12回千葉県地方自治研究集会(主催 自治労千葉県本部 共催 一般社団法人千葉県地方自治研究センター)が千葉県教育会館大ホールにおいて「自然災害と防災」をテーマに開催されました。コロナ感染予防の観点から大ホールで、席の間隔をあけての集会となりました
自治労千葉県本部の横田義之執行委員長の主催者あいさつの後、はじめに現場からの報告として、千葉市職労の五木田副委員長から「千葉市における令和元年房総半島台風等の被災状況と災害の教訓」と題し報告をいただきました。五木田氏は千葉市の土木事務所に勤務、災害発生時からの対応と今後の課題について報告、現場の第一線ではたらく自治体職員の重要性が改めて認識させられました。
基調講演は「災害対応の基本と地域連携・広域連携」と題し、高橋洋氏(認定NPO災害福祉広域支援ネットワーク・サンダーバード副代表理事)に講演をいただきました。高橋氏は元練馬区役所職員であり自治労の大先輩です。1999年から9年間区役所の防災課係長として勤務、現在は防災コンサルタントとして全国で講演されています。
講演では市町村における「災害対策本部」とは?という切り口から「防災の基本」についてクイズ形式を交えながら序盤に説明されました。その後、地域連携については公的な力だけで、命を救う「防災」の力として足りるのか?と問題提起、また広域連携の重要性について触れられたのちに、近年重視されている分野として「福祉系の分野」、広域連携の分野として「被災地の自治体業務の支援」について話されました。
第二部はパネルディスカッションを「災害時の自治体の役割と地域連携の在り方」をテーマに企画。コーディネーターに前衆議院議員・当研究センター顧問の若井康彦氏、コメンテーターに基調講演講師の高橋洋氏、パネリストに館山市会議員の鈴木順子氏、千葉県防災危機管理部防災政策課政策室室長の林直人氏、茂原市総務部防災対策課課長の積田篤氏に報告いただきました。最初に昨年の台風等の災害状況について、千葉県と茂原市の状況を報告いただき、続いて館山市議の鈴木氏から館山市の被災状況についての報告がありました。
特に災害時の議会・議員と市との連携課題については「議員それぞれが発信するのではなく議会としてまとめ市に要望する」必要性など非常に参考になる報告でした。また昨年の災害では、市町村と県の連携についていくつかの課題も指摘されており、それらについても館山市の現場から見えてきたことについても報告いただきました。
千葉県の林氏からも県としても災害対応等の検証をおこなった結果、課題について今後の取り組みに生かすことが説明され、「プロアクティブの原則(*疑わしきときは行動せよ*最悪事態を想定して行動せよ*空振りは許されるが見逃しは許されない)」を災害対応の基本理念に位置付け対応力を強化すると話されました。
今回の地方自治研究集会は、昨年の台風等の災害を踏まえ、災害時の自治体、地域連携の課題を教訓化し、対応を進める一助として企画されました。3時間を超す長時間の集会でしたが、参加した自治体職員、議員、研究者がそれぞれの立場で課題を共有する有意義な集会となりました。
講演会中止のお知らせ
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、6月21日(日)に延期した鏡諭先生の「千葉県における地域包括ケアの現状と課題」と題した講演会を中止しましたので、お知らせします。なお、予定された講演内容については、鏡先生のご厚意により自治研ちばvol.33に論文を掲載しております。
講演会延期のお知らせ
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、下記の講演会を延期しますので、お知らせします。
- 日 時 2020年3月7日(土)14時30分~
- 場 所 千葉県教育会館本館2階203会議室(千葉市中央区中央4-13-10)
- 講 師 鏡 諭(かがみ/さとし) 氏 (淑徳大学コミュニティ政策学部学部長・教授)
- テーマ 「千葉県における地域包括ケアの現状と課題」
- 主 催 一般社団法人 千葉県地方自治研究センター
設立10周年記念講演会・レセプションを開催(2019/11/09)
去る11月9日(土)、千葉県地方自治研究センターの設立10周年記念講演会並びにレセプションをオークラ千葉ホテルにて開催しました。
記念講演会は、14時30分に佐藤事務局長の司会で開会。冒頭、主催者として挨拶に立った宮﨑伸光理事長は、「設立当初、実は10年先の今日まで自治研センターの活動を継続できるとは思っていなかった。お支えいただいた皆様に感謝申し上げます」とお礼を述べました。来賓として、自治労千葉県本部の横田義之執行委員長、公益財団法人地方自治総合研究所の本田大祐事務局長から祝辞をいただきました。
記念講演は、「『全世代型社会保障』と幼児教育・保育無償化」と題して、奈良女子大学名誉教授の澤井勝先生から、社会保障制度の曲がり角となった1990年代以降の介護・医療・年金・子育て支援の施策の変遷を踏まえ、昨今、急浮上してきた幼児教育・保育無償化についてお話を伺いました。講演概要は以下のとおりです。
高齢化と少子化の予想以上の進展、介護保険の功罪
2019年10月1日に行われた消費税の8%から10%への引き上げと、それによる増収の一部、800億円を使った幼児教育・保育の無償化について、その政策化の流れについて整理をしていきたい。
介護保険制度は、医療保険、年金保険とならんで高齢者向け福祉制度として、保険制度として創設された。要介護度ごとのケアプランの策定、被保険者自らのサービスの選択が原則である。介護保険制度は、1990年代の厚生省の課長クラスや女性リーダーなどが共有した日本の急速な高齢化への危機感から生まれた。
準備過程は下記のとおりである。
1989年 ゴールドプラン(高齢者保健福祉10か年戦略)
1990年 福祉8法の改正
1997年 介護保険法成立
2000年 介護保険制度施行
介護保険施行までに3年の準備期間をかけたことに比べて、後から述べる「幼児教育、保育の無償化」は極めて準備期間の少ない制度であり問題点のある制度だと言える。
幼児教育・保育無償化の背景
幼児教育・保育の無償化は、日本の社会保障を「高齢者への傾注型」から「全世代対応型」に対応させる施策の一つだとされている。日本の社会保障の特質(高齢者重点)が強く意識されたのは2000年の介護保険制度の発足と、2004年の年金制度改革(マクロ経済スライドの導入と年金給付額の抑制)以降である。
2016年ベースで社会保障給付の68%が高齢者向け、OECD基準でも子供関係の支出割合はヨーロッパ諸国に比べ少ないなど、社会保障の高齢者への偏りが顕著になっていった。
子供の貧困への着目と子育て世代支援の動き
2006年ごろより「子供の貧困」への関心が高まり、2009年には政府が初めて 「相対的貧困率」を発表した。2010年の民主党政権下では「児童手当」から「子供手当」への改正、高校の授業料無償化などが実施された。また2012年、野田内閣の時に「社会保障と税の一体改革に関する三党合意」が結ばれ、関係法令の改正がすすんだ。さらには、2012年「子供子育て支援新制度」2014年「子供の貧困対策要綱」などが動き出す。
消費税10%への引き上げと幼児教育・保育の無償化
消費税10%に引き上げることを、選挙を前にして2回延期した自民党安倍政権は、2017年10月の衆議院選挙の公約で突如「全世代型社会保障」に転換することを宣言、消費税を10%に引き上げる際、増収分を3歳から5歳までの全ての「幼児教育・保育の無償化」や、低所得の家庭に限定したものの、大学教育の無償化として「給付型の奨学金の拡充」などを公約として掲げた。
しかしながら、政策として選挙公約に掲げたあと、ほとんど内容が議論されず、必要な仕組みや準備が遅れ、待機児童対策や保育士の待遇改善、認可外施設に対する指導監督の強化、各市町村への財源の手当てなど問題点もいくつかある。
今後、これらの問題点をめぐって、引き続き観察して議論し、高齢者も含むすべの世代に歓迎される幼児教育・保育無償化を実現する取り組みが求められている。
講演会の内容は、自治研ちばvol.31(2020年2月発行予定)に掲載を予定しています。
結成10周年記念レセプションを開催
講演会終了後、17時から佐藤事務局長の司会で開会。宮﨑理事長の主催者挨拶の後、東京自治研究センターの宮本知樹副理事長、当センターの会員でもある長浜博之参議院議員から祝辞をいただきました。当センター顧問・前衆議院議員の若井康彦さんの発声で乾杯を行い、会食・歓談へと移りました。
乾杯の後も、宮川伸衆議院議員、奥野総一郎衆議院議員、小西博之参議院議員、連合千葉議員団会議の天野行雄会長(千葉県議会議員)、社民党千葉県連の水口剛副代表(東金市議会議員)から来賓のご挨拶をいただきました。また、ご挨拶はいただけませんでしたが、多くの各級議員の皆さんに参加いただきましたことに厚くお礼申し上げます。
高橋秀雄副理事長から、スライド上映を行いながら、前史(1986年~2009年)を含めた30年余にわたる、千葉県地方自治研究センターの設立にむけた長く険しい道のりが報告され、参加者の皆さんは興味深く聞き入っていました。最後に、当センター理事の三瓶輝枝千葉市議会議員の閉会の挨拶で、レセプションを18時30分に終了しました。
「市民が進める自治体の条例づくり ―人権と福祉の事例を中心にー 」講演会の開催(2019/06/22)
千葉県自治研センター主催の講演会が、6月22日15時から千葉県教育会館において開催されました。「市民が進める自治体条例づくり―人権と福祉の事例を中心に」というテーマで、地方自治総合研究所委嘱研究員の菅原敏夫さんにお話していただきました。
菅原さんは、東京都での食品安全条例や新宿区住宅基本条例の制定を求める直接請求運動に関わった経験をお持ちです。講演では、市民が直接請求によって条例制定を求めることが如何に大変か、その現状と課題がわかりやすく触れられました。
講演の概要は以下のとおりです。
条例は市民が作れる
憲法第41条に「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と書いてあるので、国民が直接に法律を作ることはできない。一方、地方自治法第74条には、選挙権を有するものは首長に対して条例の制定・改廃の請求ができる直接請求権を定めているので、市民は法律をつくることはできないが、条例をつくることはできる。
条例の現在
そもそも条例は議会が作っているが、市民も条例の提案を議会に求めることができる。この「提案」の9割から10割は長(知事・市区町村長)によるものである。次に多いのが、議員からの提案だが、これには定数の12分の1以上の議員の賛成が必要だ。最も少ないのが、住民による直接請求となる。総務省の調査では、2014年4月1日~2016年3月31日の2年間で直接請求件数は34件で、うち29件は長の意見を付けて議会にかけられた。しかし、9割は否決、可決は1件、修正可決2件であった。
<直接請求事例1>東京都食品安全条例
この直接請求運動に出会ったのは1988年のころだった。都道府県の直接請求は大変難しい。有権者の2%の自署を対面で、2か月以内に集めなければならない。千葉県でいえば、有権者の2%といえば10万5千人になるが、2か月で集めるのはたやすいことではない。事例1の場合は、署名は集まったものの、都議会で否決となった。
<直接請求事例2>新宿区住宅基本条例
この事例は、バブルの絶頂期の1990年ごろ、家賃が高騰し、高齢者、障害者、外国人が住む部屋を見つけられないという事態の中で、取り組まれた。署名は何とか集めたものの、こちらで作成した条例案文は担当職員のチェックで真っ赤になった。しかし、牙は抜かれず、居住の権利を宣言したことと居住差別を禁止したことは残った。条例は満場一致に近い票数で成立した。基本部分は今も変えられていない。
実効性を求めて
条例条文というものが役所(地方行政)を動かすプログラミング言語のようなものであり、どのように書いたら役所がどう動くかに着目して、地方議員をはじめとした自治体関係者に条例づくりという技術を身につけてほしい。
一番最近作成した条例案は「人種差別撤廃条例」だ。元になる法律がないので、国連の人種差別撤廃条約を参考に創意工夫した。ヒントとなるものはたくさんあるが、その一つが大阪市のヘイトスピーチ対処条例で、罰則も強くないがついている。禁止条項を担保するためには、何らかの罰則がいるが、罰則の中身をどうするかが一つの焦点となっている。
今後、直接請求制度については、議会の否決が大きな壁となっているので、改革が必要である。また、条例案による役所の動かし方の学習はもっと広がるべきだと思う。
講演会の内容は、自治研ちばvol.30(2019年10月発行予定)に掲載を予定しています。
「災害列島の中の高齢者と防災」講演会の開催(2019/03/02)
3月2日、聖徳大学福祉学部社会福祉学科の北川慶子教授をお招きし、「災害列島の中の高齢者と防災」と題した講演会を開催しました。
北川先生からは、「生活者の多様性に根差した災害への備え」をどのように行うかを弱者の視点から訴え、住民の側からの心構え、地域の特性についてどう捉えるか、そして、国、地方自治体の対策についてどのようにあるべきかについて講演していただきました。
講演の概要は以下のとおりです。
千葉県は、豊かな自然と温暖な気候に恵まれ、くらしやすいとされているが、この300年を見ただけで多くの地震・津波や台風に見舞われ、とても危険な地域である。特に今後30年以内に千葉市は「震度6弱以上」の確立が85%と全国でもっとも高く、私たちは、準備をしていなくてはならない。
今後、人口構成をみると人口減のなかで高齢化率が4半世紀で約10%上昇し、公助の人口も減少してゆく。自助・共助が重要となる。また、要介護期間は男性8年女性12年であるが健康期間は2年しか差がない。要介護期間を縮めることが重要である。高齢化の進行は、災害が起きたとき避難も含めて高齢者にどのように対応していくのかが一層の問題となってくる。障害者も同じである。
私たちは、災害時に自分の健康状況、モノ(施設等)、自然環境、法律などについてどこが脆弱なのか知っておく必要がある。避難の判断などで過去の経験はあてにならない。健康面でも過信は禁物である。災害の対応において、自助7割、共助2割、公助1割とおぼえておいてほしい。まず、協力しながら避難ということになる。公助(公的支援)が一番遅れて来る。アメリカでは、DHS(前身はFEMA)という組織があり、災害時のコーディネイトを全米を10ブロックに分けて行っている。公助を円滑に行うための参考になるのでは。
東日本大震災では1626施設中、約530施設に被害があった。震災前の調査では事前に準備していたものは、おむつ、懐中電灯、水のみが多かった。宮城県の被害は、全部津波が原因であった。立地条件も重要な要素になるのではないか。
要介護者は、災害時、災害後、常に要介護者である。介護施設では、職員1人つき要介護者3人の比率である。災害時に十分な準備が必要となる。世論調査では、自助・共助に重点を置いた対応への比率が増大している。一人世帯が1/4に増えている。団地では高齢化が進み、外国人も多くなっていおり、行政としても考えなければならない。要介護者がだれでどこに住んでいるのか地域のなかで把握しておく必要がある。介護施設の多くが低平地に多く浸水、土砂災害のリスクが多く、意識しておく必要がある。独自に避難判断チャートを作成したので活用してほしい。「避難アプリ」というのもあるらしい。避難訓練に施設の参加が少なく、参加呼びかけも重要である。
防災会議等への女性の参加が非常に少ない。委員も行政側も全員男性ということもある。女性のほうが危機感を多く持っている。改善すべきである。
アメリカでは、一般避難所、病弱者用避難所、ペット同伴避難所に分かれている。病弱者用避難所は、24時間医療体制が維持されている。食事は常に温給食である。寝室、ダイニングルームが完全に分離されている。避難所は2~3週間で閉鎖される。スクールバスが有効に活用されている。ホームレス、旅行客にも対応が考えられている。日本も参考にすべきである。 今度、自民党内に「自然対策特別委員会」が設置される。私たちの意見を十分に反映させていきたい。
講演会の内容は、自治研ちばvol.29(2019年6月発行予定)に掲載を予定しています。
2018年度フィールドワーク市原南部地域の地域起こし等を視察(2018/11/21)
11月21日、千葉県地方自治研究センターはフィールドワークを実施しました。
今回の目的地は、古代には上総の国の政治・文化の中心地として栄え、現代は愛知県豊田市に次いで全国第2位の製造品出荷額を誇る工業都市である市原市です。最近は養老川沿い断崖面の地磁気逆転地層の「チバニアン」命名が話題となっております。
千葉県の中央部に位置し、県下最大の面積を誇る市原市ですが、地域での「まちおこし・むらおこし」が盛んに行われていることをうかがいました。
そこで、どのような活動が行われているのか、市原市を南北に流れる養老川に沿って、バスと鉄道によるフィールドワークに出かけることにしました。集合場所の千葉駅前は予定通り、午前8時20分にバスは出発しました。車窓の外は、ぽかぽかの小春日和です。
小湊鉄道に乗って、森ラジオステーション・チバニアンへ
最初の視察地は小湊鉄道「上総牛久駅」です。2017年に国の登録有形文化財に登録された駅舎から『キハ20形気動車』に乗って、月崎駅に向かいました。月崎駅で下車すると、駅舎に隣接する苔と山野草に覆われた奇妙な小屋が目に留まりました。
ここが次の視察地である、「森・ラジオステーション」です。この施設を管理する森遊会の田村さんからお話を伺いました。この建物は、小湊鉄道の保線員詰所だったのですが、芸術品の展示をするアート会場として保存しているのだそうです。映画のロケで使われるとのことでした。
再びバスに乗って、次の視察地の「チバニアン」のある田淵に向かいました。到着すると地元のみなさんの歓迎がまっていました。視察場所である養老川の川崖へと急坂を下っていくとやがて、地場逆転地層が露出した国指定天然記念物にたどり着きました。ボランティアガイドの渡辺先生と石井さんから、N極とS極が逆だった時代があったことや地層を調べた結果、77万年前を示す地層(白尾層)を境目として逆磁極、磁極遷移、正磁極の時期の連続した推移が分かったと説明していただきました。
内田未来楽校―昭和3年の木造校舎を拠点に地域おこし
午後は、昭和3年(1928年)に建築された木造校舎の保存をとおして、地域住民の活動及び地域おこしの拠点づくりをしているNPO法人報徳の会・内田未来楽校を訪ねました。理事長の常澄さんから江戸時代に置かれた伊丹陣屋や学校のこと、戦前・戦中・戦後の内田の暮らし、事務局長の小出さんからは内田未来楽校の活動についてお話しいただきました。
今ある資源や自然だけでは限界があるのでマルシェ(市場)や芸術祭を行うことによって、新たな力と継続力を強めているとのことでした。校舎の中の展示作品は、みなさんの遊び心があふれておりました。
国指定史跡上総国分尼寺跡展示館
日が傾いてきたところで、最後の視察地である国指定史跡上総国分尼寺跡展示館に向かいました。ビデオを見た後、展示館のガイドの方に説明をしていただきました。残念なことに到着が30分遅れとなっていたので、国内最大級の史跡を歩いてみることはかないませんでした。
解散場所の千葉駅前には渋滞によって、30分遅れの午後6時の到着となりましたが、フィールドワークは無事終了することができました。
今回のフィールドワークでは、地域おこしで活躍する市原のみなさんから、笑顔と元気をたくさんいただき、充実した一日を過ごすことができました。 ご協力いただきましたみなさまに心から感謝申し上げます。 次回のフィールドワークのご参加もお待ちしておりますので、よろしくお願いいたします。
「公共施設・インフラの老朽化と地方財政~住民の安全・安心を守るために」
第11回千葉県地方自治研究集会を開催(2018/09/22)
9月22日、自治労千葉県本部と千葉県自治研センターの共催で、千葉県地方自治研究集会が開催されました。隔年で開かれる今回の集会では、公共施設・インフラの老朽化対策をテーマに基調講演とパネルディスカッションが行われました。
冒頭、椎名衛自治労千葉県本部委員長の主催者あいさつ並びに田島要衆議院議員の来賓あいさつの後、単組報告として銚子市市職労から「銚子市におけるインスタグラムを活用したビジュアルプロモーションについて―若手職員プロジェクトチームによる調査・分析―」の取り組みについて報告を受けました。
本集会の基調講演は、『公共施設・インフラの老朽化と地方財政~住民の安全・安心を守るために』を演題に、明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授兼村高文氏にお願いしました。
兼村先生からは、講演時間は限られているので、①公共マネジメントとは何か、②老朽化した公共施設・インフラをどのようにリニューアルすればよいか、の2点に絞ってお話しいただきました。冒頭、兼村先生は、インフラの老朽化対策で最も重要なのがお金の問題であり、お金があれば建て替えや長寿命化を進められるが、現状は税金が足りずお金がない中で、どのようにアイデアを出して更新していくかが課題となっている、とインフラの老朽化対策の問題点を報告しました。そのアイデアの一つとして、「協同のガバナンス」をあげ、行政だけでできないことは住民の理解を得、住民の力を借りて問題の解決を図っていくことが必要と指摘されました。また、高齢者を資源と見て、その資源を有効活用していく取り組みを日夜行っているイギリスの"co-production"(同時生産)の事例が紹介されました。
また、この間の経緯について、1960年代後半から1970年代にかけて、公共施設・インフラ整備が非常に増加し、建築後50年を経過するものが急増しつつあり、公共施設・インフラの管理に対する機運が高まったのは、2012年に発生した中央自動車道の笹子トンネルの天井崩落事件がきっかけとなり、国・地方での取り組みが加速しているとのことでした。そのような中で、総務省は、2015年に「統一的公会計基準」を策定し、地方公共団体の資産の状況を正しく把握するためのツールとしての固定資産台帳の整備等を行い、公共施設・インフラの資産並びに老朽化の状況を金額的に実態把握ができるように取り組みを進めているが、公共マネジメントという観点からは資産を金額できちっと把握することは重要と話されました。
一方、近年の地方財政の状況に目をやると、税収の伸び悩みの一方で、社会保障関連の支出が伸び続ける中で、公共投資は右肩下がり若しくは横ばいとなっており、とても公共施設・インフラの老朽化対策に財源を増やす状況にはない中で、個々の施設の財務書類をベースにして施設の更新の優先順位付け、施設の運営管理の見直し、統廃合等を検討していく必要を述べました。それらのことを進める際に、住民参加という視点がきわめて重要だと強調されました。
基調講演の後、宮﨑伸光氏(千葉県地方自治研究センター理事長)を司会にパネルディスカッションを行いました。パネリストには、網中肇氏(千葉県議会議員)、田畑直子氏(千葉市議会議員)、島田昌信氏(千葉県総務部資産経営課副課長)、石橋和宏氏(千葉県県土整理部道路環境課副課長)、コメンテーターとして基調講演の講師の兼村高文氏にお願いしました。千葉県の島田氏からは、いわゆる"ハコモノ"を中心とした「千葉県公共施設等総合管理計画」について、また石橋氏からは道路、橋梁、トンネルなどのインフラの老朽化対策の現状と課題をメインに報告がありました。
千葉市議会議員の田畑氏からは、千葉市担当課からのヒアリングを踏まえて、千葉市の公共施設・インフラの老朽化対策全般について報告がありました。千葉県議会議員の網中氏からは、千葉県における"ハコモノ"の統廃合・集約・複合化に関わる問題点をお話しいただきました。コメンテーターの兼村氏からは、公共施設・インフラの老朽化対策を進めるにあたって、市民参加の重要性と市民参加予算の実践が提起されました。 最後に、司会の宮﨑理事長から、集会参加者の多くが現役の自治体職員であることを踏まえ、職域・現場からの発信、情報提供、あるいは情報の研究というものがますます必要になっていると、まとめを述べ、終了しました。
「地域に希望を―人口減少時代の地方財政を問いなおす」講演会の開催(2018/06/23)
6月23日、当センターの総会終了後、少子高齢化と人口減少が進む時代の地方財政に焦点をあて「地域に希望を-人口減少時代の地方財政を問いなおす」を演題に、記念講演会を15時から開催しました。講師には、自治労が設置した「人口減少時代の自治体財政構想プロジェクト」の中心メンバーの一人で新進気鋭の研究者である埼玉大学大学院人文社会科学研究科の高端正幸准教授にお願いしました。
講演では、行き詰まり感が漂う社会にあって、誰もが人間らしく生きられる社会をいかに目指しうるのか、日本社会の現状と課題、変革の方向性とその処方箋を話していただきました。講演概要は以下のとおりです。
厚生労働省の国民生活基礎調査でも、今や国民の6割―多数派が「苦しい」という生活実感を抱く時代となっている。若者の死因の1位が自殺で、自殺死亡率はG7最高であることからもうかがえる。政府は、20年間、富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちるという「トリクルダウン」の考え方に基づいて、経済成長を優先させる政策を推し進めてきた。しかし、その政策には行き詰まりが見え始めている。
一例をあげれば、実質GDP成長率は低いといわれるが、日本の生産年齢人口一人当たりの実質GDP成長率は1.5%と欧米を上回っている。労働現場では高齢者・女性を含めて働ける人はすでに目いっぱい働いている状態であり、低いといわれる実質GDP成長率を引き上げるのは無理なのは自明だ。無理な金融緩和を続けることによって経済成長を達成して、我々が直面している危機的な状況を乗り越えられるという類の言説は完全に間違っているといえる。
人々の生活を支えるべき日本の社会保障政策の特徴は、「労働による自立」と「家族による自助」を前提として、組み立てられている。現金給付の内訳をみれば、年金給付が大部分を占め、現役世代の所得保障が異常なほど小さい。現物給付のうち、医療を除くサービスは高齢(介護)以外のケアサービスは雀に涙となっている。
本年4月の朝日新聞とベネッセの調査によると、「所得の多い家庭の子どものほうが、よりよい教育を受けられる傾向」に関して、「当然だ」9.4%、「やむをえない」52.6%、「問題だ」34.3%という結果となっている。2008年調査と比べて、「問題だ」と答えた人が19ポイント低下している。不平等・貧困の拡大に有効な策を打てない政府に対する、「あきらめ」が強まっている。このような「あきらめ」が怒りとなり、世界的な排外主義・自国優先主義の右派ポピュリズムの台頭となってあらわれている。
自己責任社会では、人々は生活不安におびえ、必死に自立することを強いられる。日本の社会保障制度から得られるはずの受益感・安心感が欠如しており、税を払っても何のメリットもない政府への不信と生活保護受給者・高齢者・子育て世帯など「福祉に頼る」人々に対するねたみを助長している。このことは、階層間の連帯・寛容さが失われ、主たる税負担層かつ政治的多数派である中間層の租税抵抗を激化させている。
「人口減少時代の自治体財政構想プロジェクト」の報告書では、自己責任社会を終わらせ、現状の「弱者を救う」政策から「皆のニーズを満たす」政策への転換を提言している。すなわち、自己責任ではなく、「負担の分かち合い」の社会を実現するために、誰もが直面しうる年金・失業給付などの現物給付、医療介護ケアなどの現物給付及び就労支援という「共通ニーズ」を分け隔てなく満たす、必要原理を提唱している。
この「共通ニーズ」を満たすための新たな財源として、「連帯税」を考えている。自治体間の合意により、都道府県の個人住民税所得割の税率を、全国一斉に一律のパーセンテージで引き上げる。あるいは地方消費税の税率を引き上げて、この財源を調達する。自治体がこの財源を出し合って配り直すという、水平的財政調整の一種である。
具体化にあたっては、地方税法をはじめとした現行法制度との整合性や、地方財政計画、地方交付税算定との関係など、検討すべき論点が存在することは言うまでもないが、それらは十分に克服が可能である。地域を起点に政策転換を実現させていくために、自治体間連帯に基づく財源調達を構想が重要だと考えている。
講演会の内容は、自治研ちばvol.27(2018年10月発行予定)に掲載を予定しています。
「日米地位協定と地方自治」講演会の開催(2018/03/03)
2018年3月3日、「日米地位協定と地方自治」と題した講演会を千葉県教育会館604会議室において開催しました。講師には、日米地位協定に関する研究分野のオーソリティである法政大学法学部教授の明田川融(あけたがわ とおる)氏をお招きしました。
本題の講演内容に入る前に、日米地位協定がどのような背景・経緯でできあがったのかを予備知識として、記載しておきます。1945年に第二次世界大戦が終了した後、敗戦国の日本には連合国の日本占領軍としてアメリカ軍が駐留しました。6年後の1951年9月に、サンフランシスコ講和条約が締結され、「連合国日本占領軍は本条約効力発生後90日以内に日本から撤退。ただし日本を一方の当事者とする別途二国間協定または多国間協定により駐留・駐屯する場合はこの限りではない」と定められました。
当時、日本の周りでは、1949年に毛沢東が中国天安門で中華人民共和国の成立を宣言し、また、1950年には朝鮮戦争が勃発する等、東西冷戦の緊張関係が強まっていました。そのような中で、1952年に日米行政協定が締結され、駐日アメリカ軍の日本国内とその周辺における権利等が決められ、沖縄をはじめ日本各地に米軍基地が存在することとなりました。さらに、1960年に日米新安保条約の締結にともなって、日米行政協定から日米地位協定と改められました。
講演では、明田川氏は、最初に「全土基地方式」と呼ばれる基地の設定と使用の取り決めがきわめて特異であったことに触れました。「全土基地方式」とは、米軍が日本国内の望む場所に、望む期間、望む数の軍隊を駐留させることができるという手法を指しています。世界的に見れば、このような方式は異例であり、通常はその国におかれる米軍基地は基地名が明記されているのが一般的となっています。
サンフランシスコ講和条約と日米安保条約の生みの親と言われるアメリカのジョン・フォスター・ダレスですら、米国にそのような特権を付与する政府は、日本の主権を棄損することを許したとして自国民の非難の的になるから、そんな厄介なことを承知する政府はあるだろうか、と考えていたようでしたが、日本政府は「全土基地方式」を認めてしまいました。
基地の使用の供与に関する具体的な事項は、密室の日米合同委員会で決められていますが、沖縄県の仲井間前知事はこのことを称して「すべては米軍の御意のままに」と表現しました。1945年の日本の敗戦からの6年に及ぶ占領時代とほとんど変わらず、日本国の主権が奪われたままとなっています
そのほかに講演では、米軍基地内の環境汚染が放置されたり、基地内に犯罪者が逃げ込んだ際に操作できない等、基地内では日本の法律が適用されないという排他的管理権の諸問題に触れられました。とりわけ、沖縄でたびたび発生する軍用機墜落事故を例にとり、事故捜査等にあたって起きる諸課題について詳しく説明されました。
憲法改正問題が国会で議論されている昨今ですが、日本の「主権回復」の取り組みが急がれるべきと感じました。
講演会の内容は、自治研ちばvol.26(2018年6月発行予定)に掲載を予定しています。
new 千葉県九十九里地域で地震防災フィールドワークを実施(2017/11/08)
11月8日、千葉県自治研センターは会員サービスの一環として、地震防災フィールドワークを実施しました。朝からあいにくの雨模様でしたが、県内から21名が参加。参加者は千葉駅からバスで九十九里地域(大網白里市~旭市)へと向かいました。
千葉県に大きな津波被害をもたらした歴史に残っている地震に、1703年の元禄地震があります。地震の規模はマグニチュード7.9~8.2で、被災地域は江戸・関東諸国にわたっています。元禄地震は房総半島沖を震源として大晦日の真夜中に発生し、千葉県九十九里地域を大津波が襲ったこともあり、千葉県内の被害は、死者6,534人、家屋全壊9,610戸、流失5,295戸にも及んだといわれています((財)千葉県環境財団 編集・著作「防災誌 元禄地震-語り継ごう 津波被災と防災-(2008年10月)」)。
今回のフィールドワークでは、千葉県九十九里地域の津波災害対策に焦点を当てて①波乗り道路のかさ上げ工事、②蓮花寺(山武市)の津波供養塔、③東日本大震災による旭市の被災並びに復興状況、について調査しました。
波乗り道路のかさ上げ工事
大網白里市の波乗り道路際の海岸で、かさ上げ工事について千葉県河川整備課海岸砂防室室長の松宮正純氏から説明を受けました。
千葉県は、波乗り道路9.9キロ全線通行止めにしてかさ上げ工事を実施中で、すでに九十九里町片貝から真亀JCT間3.2キロが完成し、真亀JCTから白子町古所北海岸までの5.7キロが本年12月中の完成を予定しているとのこと。この工事は、現在の波乗り道路を約2メートルかさ上げするもので、予想される津波の高さを6メートルとして設計、土砂23万立方メートルを投入する予定とのことでした。
蓮花寺(山武市)の津波供養塔
山武市蓮沼にある蓮花寺は永享元年(1429年)室町時代に開山したとされる浄土宗の寺です。蓮花寺住職の樋口義幸氏及び山武市歴史民俗資料館の勝山康氏からお話を伺いました。
1703年の地震による大津波の規模は、4メートルから8メートルぐらいで、この付近一帯では109人が犠牲になったと伝えられているそうです。
お寺の正門から入ると、すぐ右手に八十八の石仏が並んでいます。これは、村内の信者が犠牲者を供養するために昭和6年に建立したもので、昔はこの奥の千人塚まで石仏が続いていたものをここに集めたとのことでした。
本堂の奥をまわって、竹が生い茂る中に千人塚がありました。この千人塚には109人を埋葬したと云われているもので、大正6年に初代蓮沼村村長瀧川重太氏が、当時の埋葬場所に盛り土をして建立したそうです。塚そのものの面積は200平方メートルあり、築山のようにまわりより2mほど高くなっています。土地は国有地になっており、現在、ボランティアによって管理されています。
明治6年の火災で蓮花寺の過去帳を含めた当時の記録資料が焼失してしまい、文化財とはなっていないのが残念と、樋口住職は話されていました。
東日本大震災による旭市の被災並びに復興状況
午前中の調査を終え、旭市の「いいおか潮騒ホテル」で昼食休憩。この「いいおか潮騒ホテル」は東日本大震災の津波被害で休業していましたが、2015年夏にリニューアルオープンしました。
午後は、ホテルに隣接する旭市防災資料館において、東日本大震災による旭市の被害状況と復旧・復興の取り組みについてのビデオ上映、防災資料館の管理人の方から東日本大震災時に体験された津波被害のお話を伺いました。
東日本大震災では、第1波の津波が襲ったのが地震の約1時間後でしたが、住民が安心した17時26分に第2波の7.6mの大津波が飯岡地区を襲いました。旭市では、住家被害としては全壊336世帯、大規模半壊434世帯、半壊512世帯、一部損壊2,545世帯、合計3,827世帯と旭市内全世帯の約15%が被害を受けました。また、人的被害では、14人の尊い命が失われ、今なお2人の方が行方不明となっています。
その後、旭市役所企画政策課主査の菅晃氏、副主査の小林淳二氏、総務課主査の角川幸広氏の案内で、津波避難タワー(三川地区)の視察、飯岡灯台よりの被災箇所の確認、災害公営住宅(復興住宅)、飯岡中学校及び津波避難道路の視察を行いました。
今回のフィールドワークでは、千葉県、山武市、旭市の行政担当者の皆さん、並びに山武市蓮花寺の樋口住職にはお忙しい中、とても丁寧に対応していただき、充実したフィールドワークとなりました。ありがとうございました。
「グローバル化する労働問題と働き方改革」講演会の開催(2017/06/24)
6月24日、早稲田大学社会科学総合学術院の篠田徹教授をお招きし、「グローバル化する労働問題と働き方改革」と題した講演会を開催しました。
篠田先生は、労働問題を専門とする数少ない研究者のお一人で、様々な国の労働問題にも精通されています。講演会では、イギリスのEU離脱やトランプ現象の背景等にもふれていただき、わかりやすいお話をしていただきました。講演要旨は以下のとおりです。
グローバル化が進み、世界が急速に変化し、見えていたはずの未来が不透明になってしまった。 最近の世界情勢を見ると、英国はEUからの離脱を決定し、米国ではトランプ大統領が誕生するなど、大手メディアの予想を裏切る政治状況が生まれた。
なぜ、予想が外れるのだろうか。米国では、マスメディアの報道に対し、インターネット上には反論する声が溢れていた。これまで、マスメディアが無視してきた人たちが声をあげたのだ。
トランプ大統領は、マスメディアが正しいとしてきた事実を『フェイク』と一蹴し、『アメリカ・ファースト』と移民排斥と自国中心主義を吹聴した。しかし、移民が白人の仕事を奪っているとも言えないし、移民の多くが、白人のやりたがらない仕事をしている現実もあり、移民なしでやっていけるのだろうか。
国際紛争の手段として、武力行使をして鎮圧したとしてもテロはなくならない。なぜなら、ゲリラになった理由を問うと、「仕事がないからゲリラになった」という答えが返ってくるという。銃を取り上げても、彼らに仕事を与えなければテロはなくならない。 未来が見えないので、みんながイライラしている。今、労働問題の多くは、パワハラやイジメによるメンタルに関するものだ。ソフト労災という、全く公的規制のない事件がほとんどである。
最近、これまで薄かった労働問題に対する学生たちの関心が変わってきた。若者にとって、自分がどのような職業に就くかは重要な問題であって、アイデンティティそのものである。ミレニアム世代(1980~2000年生まれ)といわれる彼らは、IT世代なのでスキルは高く、しかも世の中の役に立ちたいという気持ちが強い。加えて、彼らの多くは、このままでは地球がおかしくなるという危機感を持っている。
我が国の政治状況を見ると、安倍1強体制が続く。安倍政治の強さは、第一次安倍政権から『再チャレンジ』を取り上げ、さらに第二次政権になってからも『一億総活躍』や『女性活躍』など一貫して、労働問題に取り組んできたことにある。 グローバル化とは、ローカルとグローバルに境目がなくなり、あらゆる場所に外国人がいることである。従って、自分の隣りに色々な人がいることを認め、みんなで問題解決するための仕組みを作ることが重要となる。
働き方改革とは、働くことの意味を自分から考え直すことである。 グローバル化時代の働き方改革とは、世界の人たちと職業を奪い合うのではなく、不況と失業の波を乗り越え、一緒になって生きていくことではないだろうか。
講演会の内容は、自治研ちばvol.24(2017年10月発行予定)に掲載を予定しています。
「中東世界と日本」講演会を開催(2017/03/04)
当研究センターの講演会は地方自治を中心に、医療、福祉、地方分権、防災などを時々の課題としてきましたが、今回は激動の世界に目を向け、中東問題をテーマにして参議院議員の大野元裕氏を講師に招いて、3月4日に千葉県教育会館にて講演会を開催しました。
講演会は、網中肇県議会議員(当センター理事)の司会で開会し、宮﨑理事長の主催者あいさつの後、早速、大野氏より「中東世界と日本」と題する講演に移りました。大野氏は、13年間中東に滞在した経験を持ち、現在も中東調査会客員研究員をつとめるなど中東研究の専門家として活躍されています。講演では、中東問題を考えるうえでの基本的な視点を踏まえたわかりやすい話をしていただきました。講演概要は以下のとおりです。
まず「中東」の定義は定まったものがなく、日本の外務省の定義では、イラン、イラク、シリア、ヨルダン、サウジアラビア、イスラエル、レバノン、エジプト、リビア、バーレーン、アルジェリア、チュニジア、モロッコ、あたりまでをさすとのことです。中東は、地政学的にヨーロッパとアジアとアフリカを結び、しかも大量の石油が産出する重要な地域ですが、「まさに資源のない日本にとっては、好き嫌いに関係なく、つき合わざるを得ない地域」との基本的な認識が示されました。
次に大野氏は、「中東の石油価格は、基本的に世界のエネルギー価格を決めており、ほとんどのエネルギーが、石油価格が上がった瞬間にすべて値上がりする。投資の市場で一番大きな物品だから、石油価格が上がるとほかの商品、特に原材料が必ず上がる。それから、これが上がるとマーケットが引きずられる。こういう状況で、石油の価格というのは今でも変動する」と中東の石油が世界経済に及ぼす影響にふれました。
日本の石油輸入の特徴にふれ、その8割が中東に依存しており、これほど中東に依存している国はアジア・太平洋地域ではほとんどない、とのことでした。また、大野氏は、「石油価格は、需給と供給でコントロールされないため、経済では測れない。1973年の第1次オイルショック、1979年の第2次オイルショック、1980年代のイランイラク戦争等をはじめとして、中東情勢が不安定になると価格が急騰する」と石油価格に関連するもう一つの特徴にふれました。
中東石油に依存する日本にとって、「中東情勢が安定していてくれればよいのですが」としながら、講師は「アラブの春」の状況分析、イスラム教とはなにか、イスラーム原理主義はなぜ生まれたか、中東情勢の不安定さの要因について話を掘り下げていきました。「アラブの春」は、チュニジアの町で、違法に道で物を売っている若者が、警官に商品を没収される等のいじめを受けたことに対して、油をかぶって焼身自殺したことがきっかけでしたが、それがネットで拡散して暴動に発展していきました。
なぜ、中東地域に広がっていったのか、それにはみんなが抱える共通の問題意識があったからであり、「深刻な話だが、中東世界では出世するためには何が必要かといえば、それはコネだ。教育ではない。湾岸諸国などのお金持ちの国では教育レベルは高いが、それでも出世するためにはコネが必要」と講師は述べ、一部の特権階級と何をしても決して浮かばれない階層の人たちというアラブ社会が長年抱えてきた構図をひっくり返したのが、チュニジアの事件であったと指摘しました。しかし、「アラブの春」によって、独裁政権を取り換えましたが、下部構造が変わらないため、社会はよくなりませんでした。
大野氏は中東情勢を単純化し、わかりやすく説明。それによると、イラクではスンニ派からシーア派に政権が変わったが、スンニ派を支援するサウジアラビア等の湾岸諸国とトルコ、アサド政権やシーア派を支援するイランやレバノンという中に、ISが入ってきて、三つ巴となっており、どの国も自分の国のことで手一杯の状況とのことでした。
最後に、大野氏は、中東の人たちは日本人が大好きで、「日本は立派でヨーロッパやアメリカに正々堂々と対峙している。これだけすばらしい国は見習わなければいけない」というようなイメージを持っており、このことをうまく活用した中東との関わりを考えていく必要があるとしています。軍事的に関わるというのは日本の場合には無理があり、地域の安定化やテロ等の危機の封じ込め、地域社会における収入源の創出というような、日本が得意とする分野でいかに貢献できるかが重要と提言されました。
講演会の内容は、自治研ちばvol.23(2017年6月発行予定)に掲載を予定しています。
「東日本大震災5周年・首都圏大地震をしのぐために」
第10回千葉県地方自治研究集会を開催(2016/09/17)
9月17日(土)13時30分から、第10回千葉県地方自治研究集会が千葉県教育会館会議室で開催されました。本年が東日本大震災から5周年の年にあたることから、震災の経験を風化させず、近い将来に首都圏を襲うであろうといわれている大地震への備えを兼ねて「危惧される首都圏大地震をしのぐために~歴史に学び、東日本大震災の経験を風化させない~」を集会テーマとしました。
はじめに、自治労千葉県本部の椎名委員長の主催者のあいさつの後、2単組から報告が行われました。東日本大震災時に液状化被害に襲われた千葉市職労及び神崎町職労からの被害状況について単組報告が行われました。
基調講演は、前衆議院議員・都市プランナーの若井康彦氏を講師にお願いしました。「21世紀千葉地震に備える~せまり来る首都直下地震の危機~」を演題に、千葉県に大地震による災害いつ発生しても不思議でないこと、一人一人が当事者意識を持つことの大切さが語られました。
「21世紀千葉地震」という言葉は一般的に使われてはいませんが、あえて若井氏が「21世紀千葉地震」というタイトルを使ったことには二つの理由があります。一つ目が地震に対する当事者意識を持ってもらいたいこと、二つ目は千葉県が大地震の「主戦場」となり大規模な災害が発生する危機が間近に迫っているという認識を共有してもらいたいこと、の二つです。
若井氏は千葉県を襲った過去の大地震を説明しながら、千葉県における地震の危険性について言及しました。1605年に「慶長地震」という大地震が発生したこと、その後の1703年12月31日に千葉県の東方沖を震源とした「元禄地震」は、マグニチュード8.2という非常に大きなものでした。高さは8mに及んだと考えられている津波がまともに千葉県の九十九里一帯を襲い、一説によると、県内で亡くなった人の数は6,534名といわれているとのことでした。過去の地震で亡くなった方を慰霊するために、千葉県内には、山武市蓮花寺の「八十八石仏」や「千人塚」というモニュメントが九十九里地域だけで18か所もつくられているそうです。
また、1923年の関東大震災を取り上げながら、東京で10万人以上が焼け死ぬということがクローズアップされがちですが、実は震源域の一部である房総半島南部では建物の損壊がひどく、千葉県館山市などでは9割の建物が倒壊した、といわれています。まさに「千葉地震」が発生した場合は、東日本大震災で千葉県が被った津波・液状化等による被害以上の被災を覚悟する必要を強調されました。
対策の基本の考え方として、若井氏は九十九里浜の高さ3mの「波乗り道路」を例にあげ、かさ上げ工事中の「波乗り道路」よりもはるかに高い津波が襲ってくることは容易に想定できるが、津波のエネルギーを弱めることはできるとし、完全に防げない災害ならば減災を基本に対策を立てることが大切だと訴えました。自助・共助・公助といわれるが、阪神淡路大震災では共助によって建物倒壊等から77%の方が助かったとし、地震が起きた最初の5秒間はまず自分を助けることに全力を注ぎ、それから共助にまわることを基本におくべきとしました。
千葉県での大きな被害は都市部で想定されるとし、地震災害が複合的な災害であることを念頭において、建物の倒壊、建物の火災等に対応していくことが必要であるとした上で、とりわけ古い時代につくられた木造密集市街地が災害時に大変危険と指摘しました。一例として、幅1km程度の中に5本の鉄道と3つの幹線道路がひしめいている船橋駅周辺の密集地の問題が出されました。
最後に、若井氏は熊本城の飯田丸の崩壊防止工事が復興のシンボルとして進められていることにふれ、本当に地域にとって何が重要か考えさせてくれるよい事例だと締めくくりました。
その後のパネルディスカッションでは、千葉県自治研センターの宮﨑伸光理事長が司会を担当し、コメンテーターとして若井康彦氏、パネラーとして浅尾一已氏(千葉県防災政策課政策班主幹)、吉田博之氏(香取市企画政策課政策班長)、岡野純子氏(浦安市議会議員)からお話を伺いました。パネラーの皆さんの発言要旨は以下のとおりです。
<浅尾一己氏(千葉県防災政策課政策班主幹)>
古文書に書かれている1605年の「慶長地震」以降、「延宝」、「元禄」、「安政」、「江戸」、「大正関東」、「千葉県東方沖」、「東北地方太平洋沖地震」が発生し、千葉県に大きな被害を及ぼしました。
「プレートの境界で起こる地震」というのは、非常にマグニチュードが大きくなるということと、基本的には津波を伴ってくる地震が多いということが特徴です。千葉県に大きな被害を起こした地震というのは、「プレート境界の地震」であったと思います。
千葉県が2016年5月に被害想定の調査を公表しました。一つが、千葉県の人口分布ですとか建物の集中度等を見れば、東葛・葛南地域で起きた場合が、やはり一番大きな被害が出るであろうということを想定したのが「千葉県北西部直下地震」です。死者も2,000人ぐらい、全壊焼失が8万戸以上という非常に大きな被害を想定しています。
二つ目が、鴨川沖あたりを震源としてマグニチュード8.2ぐらいの地震が想定したのが、「房総半島東方沖・日本海溝沿い地震」で、津波を伴う地震であるということで地震の被害想定を行っております。
公助・共助・自助の三位一体で対策を進めないと、生命・身体・財産が守れません。公が入っていくには時間がかかりますので、まず、どうにか自助で自分の身を守ることが大切で、次に、共助・公助が対応することになります。
<吉田博之氏(香取市企画政策課政策班長)>
「東日本大震災」における香取市の震度は5強でした。香取市の液状化被害は、被害面積が約3,500ヘクタール、約5,000棟の建物被害。それからなものとしては、河川の河床隆起等が顕著で、農地の作付不能面積が2,500ヘクタールでした。
中世の千葉県北部及び茨城県南部には、"香取の海"と称される内海が広がっていました。今回の大震災で液状化がはげしかった利根川左岸域は、江戸幕府が東京湾にそそいでいた利根川の東遷事業を行うことによって陸地化してきたところで、砂洲状となっているところに集落が展開していました。また、利根川右岸域は明治以降になって埋め立てがされたところで、この地域には香取市役所があり、新興住宅として都市化・市街地化された地域も大規模な液状化被害を受けました。。
発災当初、被災者生活再建支援法によります罹災判定の基準には、液状化が全く考慮されていませんでした。香取市内の液状化被害で多かったのは、建物が垂直に沈下してしまうという「類型Ⅲ」といわれる被害ですが、これが救済の対象にならないということで、被害判定を覆すべく、喧喧諤々内閣府とやり取りを行いました。結果として「建物の傾き」「建物の基礎の潜り込み」による判定基準を追加し、液状化被害を受けた家屋の判断基準を事実上引き上げる救済措置を設けることとなりました。
<岡野純子氏(浦安市議会議員)>
東日本大震災によって、浦安市域の86%が液状化被害にあいました。被害棟数は9,154棟。今回の東日本大震災で液状化被害が計2万7千棟ですので、その約3分の1が浦安での被害ということになります。記録に残っている中では、世界最大の液状化被害だと言われております。
ライフラインの応急復旧が完全に終わったのが、一番早いガスで3月30日、下水道が4月15日でした。つまり3月11日から1か月以上、下水道が使えませんでした。上水というのは備蓄や救援物資で、何とかなるところもあります。ところが案外困るのが下水です。 「計画停電」で本当に困ったのが、被害が大きかったたくさんの高層マンションでは、電気を切られてエレベーターに乗れないことでした。また、しばらくすると、液状化の土砂をスコップでよけて、道の横に山となって置かれている土砂が乾いてきたら、次は砂が町の中を舞うわけです。常に西部劇のように空中が砂まみれで、みんな防じんのゴーグルとマスクをしながら町の中を歩きました。
大震災当時、私は専業主婦で浦安市議選に出馬の準備をしていました。その1ヵ月後の4月に初めて市議会議員になりました。私の持論ですが、災害に対する特別条例が必要ではないかと思っています。参考になるのが箕面市の例で、これは東日本大震災のあとにつくられた条例でありまして、「災害が起こったときに、法令を妨げない範囲で条例を優先させる」という前置きを置いた上で条例をつくっています。これが仮に浦安市にもあったならば、今回の震災でも十分に使えたなと感じました。
被災自治体の議員として、まずは特異な経験をした浦安から将来に向けての有効な行動をとれるように、今後も働きかけをしていきたいと考えています。
講演会の内容は、自治研ちばvol.22(2017年2月発行予定)に掲載を予定しています。
「『地方創生』と『一億総活躍』」講演会の開催(2016/06/11)
6月11日、自治研センター総会の終了後、東京大学大学院政治学研究科の金井利之先生を講師にお招きし、「『地方創生』と『一億総活躍』」の演題で記念講演会を開催しました。この講演会直前の6月2日に「ニッポン一億総活躍プラン(以下、『プラン』と略す)」が閣議決定されました。講演では、このプランの分析を中心に鋭い語り口でお話をしていただきました。
金井先生は、まずプランが7月の参議院選挙目当てとなっており、本当に国民生活のことを考えていないと指摘。プランの内容は「一億総活躍」ではなくて、みなで滑り落ちるための総滑落プランだとしました。
また、このプランは「成長か分配かという長年の論争に終止符を打ち、成長と分配の好循環という日本型モデルを打ち出す」としていることに対して、1990年代から日本の中で行われていることは、中産階級や貧困層への分配を減らして一部の富裕層が成長したという「好循環」でしかなく、その構造は今も変わっていないと指摘しました。
プランは、2015年9月のアベノミクスの新三本の矢(GDP600兆円、出生率1.8、介護離職ゼロ)を踏襲しています。プランやアベノミクスがいう好循環を生み出すためのスタート台は経済成長(名目GDP600兆円)となっていますが、金井先生によれば、アベノミクスの乏しい果実は法人税減税・国土強靭化で消えてしまい、おまけに消費税10%増税を延期したため、第二、第三の矢である社会保障(子育て・介護)に財源をまわせなくなったとしました。
日本では、生産性が高い・低いといった生産サイド(供給サイド)の議論が幅を利かせていますが、実は消費サイド(需給サイド)の議論が重要とのこと。今回のプランは、菅直人首相時代の社会保障税一体改革の"パクリ"とのことですが、キチンと所得税・法人税とのバランスをはかりながら、消費増税を行って強い財政をつくり、強い社会保障に財源を回すことによって需給サイドを下支えすることに目を向ける必要があると述べました。
講演会の内容は、自治研ちばvol.21(2016年10月発行予定)に掲載を予定しています。
「世界と日本のいま~私たちの生活どうなる~」講演会の開催(2016/02/20)
2月20日、法政大学の萩谷順教授を講師にお招きし、「世界と日本のいま~私たちの生活どうなる~」を演題に講演会を開催しました。
萩谷氏は、世界経済が大変調に陥っている状況と日本経済へのマイナスの影響にふれ、"先進国病"を克服するために、「イノベーション」「日本人の働き方の根本的な改革」そして「教育」が重要な柱であると話されました。講演要旨は、以下のとおりです。
昨年12月のアメリカの利上げを大きなきっかけとして、中国経済の変調がそれに重なり、世界経済が大変調に陥っている。中国経済について、過剰な生産力、賃金水準の上昇及び高齢化の進展にともなって、世界の工場といわれた中国において国内需要が減少している。アメリカの利上げ、資源安・原油安に、中国経済の変調が加わって、世界経済の需要が大きく落ち込んできている。
いままで新興国に流れ込んでいた資金が、アメリカではなくて、日本に向かっている。その結果、「安心な円になだれ込む」「金利の安い円を買って、マネーゲームをやる」という事態が発生している。円安株高というのはアベノミクスの最大の売りであったが、3年間のアベノミクスの成果はほとんどなくなってしまった。
このような中で、何をしなければならないか。それは"先進国病"の克服だ。先進国病"とは、経済成長がストップすること、少子高齢化が進行すること、社会保障・社会福祉支出が増大することだ。その結果、社会保険料と税金では賄いきれなくなり、国債が発行されて膨大な借金の山ができる。
日本はそれが1千兆円を超えてしまった。経済政策の二つの潮流に「大きな政府」と「小さな政府」があるが、"先進国病"の克服にはこのどちらもダメだ。論理的には経済成長をすることによって、国民生活を傷めずに財政再建も実現できるわけで、これがアベノミクスの考え方だ。
このことをどうやって実現するか、重要な三本の柱は「イノベーション」「日本人の働き方の根本的な改革」そして「教育」だ。一番大事なのは、「日本人の働き方の根本的改革」である。イノベーションとは、「新しいアイデアから社会的意義のある新しい価値を創造し、社会的な大きな変化をもたらすこと」で、大事なのが「自発的な人・組織・社会の幅広い変革を起こす」ということ。
「日本人の働き方の根本的改革」とは、同一労働・同一賃金を実現するために一番大事なのは、「労働時間を賃金の算定の基礎にすること」から「成果を賃金算定の基礎」に変えなくてはいけないということ。勤勉さを測る「国際標準」は労働生産性。報酬の基準を労働時間から成果に変えることだ。もう一つ乗り越えなければいけないのが、就職における新卒一括採用をやめなければいけないこと。そのためには、労働者側も使用者側も労働について意識の根本的な変革が必要だ。
講演会の内容は、自治研ちばvol.20(2016年6月発行予定)に掲載を予定しています。
2016年自治体政策フォーラムを開催(2016/01/25)
1月25日、自治労千葉県本部と千葉県自治研センターの共催で「2016年自治体政策フォーラム」が、自治労推薦・自治研センター会員の地方議員、自治労単組代表者を対象にオークラ千葉ホテルにおいて開催されました。
主催者あいさつに立った自治労千葉県本部の椎名委員長は、全国の自治体の非正規労働者が70万人、自治体職員の40%に達している等の現状や自治労の掲げる政策に触れながら、参加した議員と一緒になって自治体改革を取り組む決意を述べました。 今回のフォーラムは、三本の講演で構成されています。
講演1 自治体議員に期待する
第1は、「自治体議員に期待する‐改めて3つの『せいとうせい』から自治体議会の改革を考える」と題して、法政大学教授で千葉県自治研センターの宮﨑伸光理事長が講演。
宮﨑理事長は「昨今の世情を眺めると、ポピュリズムの危険性を感じる。3つの『せいとうせい』とは、①法治主義・立憲主義に則ってきちんとした手順を踏むことが規範力の源泉となる正統性、②法律の範囲内で条例を制定でき、法律の空白部分における条例制定ができるという正当性、③多数決が絶対ではないという政党制、を指す。自治体改革を考えるうえで、3つの『せいとうせい』を維持強化することが必要」と説明。最後に、とげとげしくギスギスした昨今だからこと、法秩序の守護者たる議会の役割を期待したいと結びました。
講演2 2016年度地財計画と地方財政
第2は、「2016年度地財計画と地方財政」と題した、前地方自治総合研究所研究員の高木健二氏の講演。冒頭、高木氏は2015年度の補正予算(3兆3213億円)にふれ、「そのうち、『1億総活躍社会』の緊急施策(1兆1646億円)では、約1100万人を対象に『年金生活者等支援臨時福祉給付金』3624億円を計上し、1人当たり3万円の現金を配る(給付は2016年4月以降)。これは、消費税の軽減税率1兆円と合わせて、本年夏の参議院選挙対策以外の何物でもない」と指摘。
2016年度地方財政計画の規模は、85兆7700億円(前年度比+5000億円)となり、微増とのこと。高木氏からは、地方財政計画の歳入・歳出の詳細にわたり説明がありました。以下にポイントを記載します。
1 給与関係費は、人事委員会勧告等により地方公務員給与がある程度上がる。しかし、義務教育教職員をはじめとした地方公務員の定数が削減され、また、非正規職員化が進むことにより、給与関係費は辛うじて前年度比で減額を免れている状況となっている。
2 東日本大震災復旧復興事業の復興予算が、毎年度膨大な「不用額」「繰越金」、低水準の「執行率」となっている。被災地の地方自治体職員等の人員不足により、復興計画の策定等の業務が停滞している。被災自治体では、被災以前から、地方公務員を大幅削減し、非正規職員に置き換えてきたことを早急に転換し、復興に必要な人材確保に取りくむ必要がある。
3 地方単独事業費として「まち・ひと・しごと創生事業」1兆円が、2017年度も引き続き計上された。この「まち・ひと・しごと創生」の長期ビジョンと総合戦略の「基本目標」には、「地方における安定雇用を創出する」ための「主な施策」として掲げている「地域産業の競争力強化」などの迂遠な施策ではなく、「若者雇用対策の推進・正社員実現加速」を最優先課題にすべきだと考える。
4 東京都などの不交付団体の水準超経費の動向からみて、不交付団体の地方税の再分配がもっと問題視されてしかるべき。東京への一極集中による税等の集中の是正は、東京都などの税を取り上げ、勝手に国税化するような「自主税源の簒奪」、「自主課税権の侵害」、「地方自治の否定」の安易な政策ではなく、中央政府各省庁の徹底的な分権・分散政策を根本から打ち出すことが必要だ。
講演3 安倍政権と日本の政治の行方
最後は、前総理大臣・衆議院議員の野田佳彦氏による「安倍政権と日本の政治の行方」と題した講演です。
野田氏は、冒頭、安倍政権の最も本質的な問題は、昨年の解釈改憲、臨時国会を開催しなかったことなどから、立憲主義に反する、憲法をないがしろにする政権である。一日も早く、退陣させなくてはいけないとの認識を示しました。
また、子育て世帯を対象に2015年度3千円、2014年度1万円を支給していた臨時特例給付金について、財源難を理由に廃止したが、その代わりに出てきたのが住民税非課税世帯の65歳以上に3万円を支給するというもの。住民税非課税世帯には若い世代もいるが、なぜ若い世代をはずすのか。投票率の高い高齢者にのみ支給するというのは、選挙目当てのバラマキの局地と批判しました。
厚生労働省の統計調査を見ても、格差は間違いなく拡大している。子供の貧困は6人に1人に達しており、きちんとした分配が行われていない。アベノミクスも幻想だということがはっきりしつつある。雇用が良くなった、株が上がったと手前味噌な宣伝をするが、GDPはこの3年で平均0.9%なのに比べ、民主党政権時代の3年3ヶ月が平均1.7%だったのを見れば明らか。国が社会保障のセーフティネットを張って下支えをし、雇用を安定させることの方が経済の好循環につながる。
野田氏は「分配こそが民主党の成長戦略」と言い切り、おこぼれ理論の自民党との違いを鮮明にさせるべきと述べ、講演を終えました。
「『地方創生』と地方自治」講演会の開催(2015/06/13)
千葉県自治研センター主催の講演会が、6月13日(土)に千葉県教育会館の会議室において開催されました。
今回は、読売新聞東京本社編集委員の青山彰久氏をお招きし、「地方創生」と地方自治-地に足をつけて考える-を演題として、現地取材を通じた農山漁村で力強く生き抜く人々の生活実態を踏まえた、人口減少社会の政策の在り方等について、幅広い貴重なお話を伺いました。
青山氏は、増田寛也元総務相が関わる日本創生会議が消滅自治体リストを1年前に公表したのを受けて、高知県大豊(おおとよ)町の「限界集落」を取材して記事にまとめました。大豊町は愛媛県と徳島県との県境に位置し、吉野川支流から急坂を上った標高600メートルの傾斜地に集落が広がっています。人口は4400人で85の集落のうち限界集落が7割ありますが、平成に入って消えた集落はないとのことです。
集落が強靱だったのは人口の2割強を占める昭和一けた生まれ世代の力であり、人々が町を出ても残って耕し続けたこの世代が集落を守ってきました。しかし、現実を直視すると、昭和一けた世代がすでに全員80歳を超え、この世代を失えば、強靱だった集落も終焉の時を迎える所もでてしまうかもしれません。
表情豊かな国土を維持することの大切さを見つめ直さなければならない。農山漁村を切り捨てれば、都市も亡びると青山氏は警鐘を鳴らしています。
また、政府が進めようとしている「地方創生」の手法について、地方分権と逆行しており、最も重要な住民参加がなくなるのではないか、「頑張る地方を応援する」という政府のメッセージは勝ち組・負け組をつくることにつながるのではないか、等が懸念されています。
「地方消滅論」に惑わされず、国の提示する政策の「質」を見極めて選択し、地域現場に根ざした総合政策をつくることの必要性が語られました。
集会の内容は、自治研ちばvol.18(2015年10月発行予定)に掲載を予定しています。
在宅医療・介護の第1回シンポジウム開催(2015/02/07)
2月7日、連合千葉議員団会議の主催で調査研究事業第1回シンポジウム(共催:千葉県地方自治研究センター)が千葉県教育会館大ホールで開催されました。
今回のシンポジウムは、連合千葉議員団会議と地方自治研究センターが共同して2014年9月から2カ年にわたり取り組んでいる、在宅医療等研究会(福祉、防災、地域活性化の3分科会で構成)の調査研究活動の中間報告の場として企画されました。
シンポジウムは、網中肇県議(千葉市中央区)の司会で開会。連合千葉議員団会議の会長の天野幸雄県議(千葉市稲毛区)の主催者あいさつの後、三瓶輝枝市議(千葉市花見川区)、宮間文夫市議(大網白里市)、湯浅止子市議(市川市)の三氏から各地域の医療・介護の現状と取り組みが報告されました。
その後、秋山正子氏(NPO法人白十字在宅ボランティアの会理事長)から「地域で生き生きと暮らし続けるために-在宅医療を考える」と題した基調講演が行われました。訪問看護師として20年余にわたり在宅ケアに携わった実践に基づいた貴重なお話をうかがいました。まず、秋山氏は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目前にひかえ、日本の医療・介護制度が大きく変わろうとしていることにふれました。
これまでの総合病院を中心とした医療・介護の在り方から、かかりつけ医などの医療機関、在宅看護・介護スタッフ、介護支援施設等の地域のつながりをベースに在宅ケアを中心とした医療・介護への在り方、いわゆる地域包括ケアシステムへの転換が進められていることを説明。このシステムを構築することについては、まさに地方自治そのものだが、すでに地域の取り組みに強弱があり、地域差が生じているとのことでした。 国民の8割が病院で亡くなっている今の日本。たとえ、病院に入院しても、できるだけ短期間で地域で戻り、住み慣れた自宅や介護施設等、患者が望む場所での看取りができるまちづくりの必要性が述べられました。
講演の後段には、NHKプロフェッショナル仕事の流儀「訪問看護師・秋山正子」のDVDを放映。秋山氏が携わった訪問看護の事例-6年間入院していた難病患者の退院支援、認知症状の進行・うつのある独居高齢者の支援等-、高齢化の進んだ都内の団地で開設した「暮らしの保健室」を紹介しながら、その人らしく暮らした生活の場での人生の終わりをどう支援するか、重装備にならずに終末期を過ごすにはどうしたらよいか、等についてわかりやすく話していただきました。
シンポジウムの後半は、県内で活動する、医師、研究者、地方議員などによるパネルディスカッションを開催。コーディネータは当自治研センター理事長の宮﨑伸光氏(法政大学教授)がつとめ、パネラーの土橋正彦氏(千葉県医師会副会長)、天野行雄氏(議員団会議会長)、石井宏子氏(千葉県議会議員・君津市)、鏡諭氏(淑徳大学教授)からそれぞれ報告をうけました。会場からの質問には、コメンテーターの秋山正子氏が受け答え、講演内容の理解を補強。パネルディスカッションの終わりに、鏡諭氏は、医療・介護をコーディネートできる人材がいる地域は取り組みが進むが、そのような人材はそれほど多くない。身の回りのことに対して「気づき」が大切であり、地域での連携・工夫によって課題を一つ一つ解決していくことが必要と指摘しました。
シンポジウムは、連合千葉議員団会議副会長の岡部順一市議(君津市)の閉会挨拶で終了しました。このシンポジウムの内容は、自治研ちばvol.17(2015年6月発行)に掲載を予定しています。
首都圏の自治研センターが指定都市・中核市の財政課題等を取りまとめ(2014/10)
「当法人が常設してきた研究会に自治体財政研究会がある。2000年前後には都区財政調整制度を集中的に調査・研究し、その後は多摩地区各市の財政を分析してきた。2012年度からは、対象を東京から首都圏へと拡げ、第30次地方制度調査会での大都市制度をめぐる議論も追いながら、指定都市、中核市の課題について考察を重ねてきた。…」(東京自治研究センターの紀要「るびゅ・さあんとる」vol.14《2014年10月》より抜粋)
東京自治研究センターの呼びかけで、地方自治総合研究所、神奈川県自治研究センター、埼玉県自治研究センター、千葉県自治研究センター、葛飾自治研究センター、八王子自治研究センターのスタッフが集まり、大都市制度に焦点を当てながら、首都圏の指定都市・中核市の財政課題などについて議論を重ねてきました。この度、議論結果が東京自治研究センターの紀要「るびゅ・さあんとる」vol.14に取りまとめられました。
その紀要に、千葉県自治研究センターから主任研究員の申龍徹さんが「千葉市の財政再建化改革と市民サービスの保障」(1.05MB)と題したレポートを執筆しました。千葉市の財政危機の現状、そのような事態に至った経緯と背景、財政再建の取り組み状況と今後の市政課題等について、千葉市を取り巻く概況がわかりやすくまとめられています。ご一読をお勧めします。
千葉県在宅医療等研究会キックオフ集会開催(2014/09/27)
9月27日連合千葉議員団会議と共同にて在宅医療、防災、地域活性化をテーマに研究を行う標記集会を開催しました。連合千葉議員団会議とは3年前、少子化対策と地域医療をテーマに研究会を開催し、冊子も出版しましたが今回はその第2弾です。今回の集会を出発点にして約2年間にわたり研究事業を行う予定です。
今回は淑徳大学の鏡諭先生の基調講演で「社会保障の変容とコミュニュティ」と題した講演を受けたあと、福祉、防災、地域活性化の3分科会に分けて討論を行いました。来年2月7日には研究の中間報告を兼ねた集会も予定しています。
第9回千葉県地方自治研究集会を開催(2014/09/20)
9月20日、第9回千葉県地方自治研究集会が千葉県教育会館で開催されました。自治労千葉県本部の椎名衛委員長並びに千葉県地方自治研究センターの宮﨑伸光理事長から主催者あいさつの後、さっそく2本の職場自治研活動のレポート報告がありました。
レポート報告ののち、法政大学の杉田敦教授から「暴走する権力と民主主義」と題した基調講演が行われました。国家秘密保護法の制定や憲法解釈変更による集団的自衛権の閣議決定など、まさに「暴走する」という言葉がぴったりあてはまる安倍政権。 杉田先生は「このような動きは、バブル崩壊後の1990年代の政治改革あたりから強まった。この政権の特徴として、権力を扱う作法をわきまえず、安全装置なしの粗雑なやり方で物事を進めていること、『決められる政治』を希求する方向に世の中の流れが傾きつつある中で権力を集中させることがあげられる」と指摘。このような国家主義と強権的な手法に対して、自由民主主義(立憲デモクラシー)の立場からの反撃を対抗軸として、暴走をストップさせることの重要性が触れられました。
基調講演をうけてのパネルディスカッションは、宮﨑理事長(千葉県自治研センター)の司会で進行。パネラーとして、国会質問で安倍首相を鋭く追及している小西洋之参議院議員、「再び戦争をさせない千葉県1000人委員会」のメンバーでもある広瀬理夫弁護士、基調講演の杉田先生の3名から、国会内の状況、千葉県内の取り組み等の報告を交えながら、さらに理解を深め合いました。
集会の内容は、自治研ちばvol.16(2015年2月発行予定)に掲載を予定しています。
銚子市職労と我孫子市職がレポート発表
今回の自治研集会では、レポートがふたつ報告されました。 ひとつが、銚子市職労が東日本大震災の経験を風化させまいと実施をしたアンケート調査です。大震災によって、少なからぬ津波被害があった銚子市ですが、市職員並びにOB等を対象に2013年4月~6月にかけて第1次アンケート調査を実施。2013年9月に「語り継ぐために」という報告書にまとめ、さらに2014年2月~5月にかけて第2次調査を行い、今回の報告となりました。
もうひとつが、我孫子市職がまちづくりへの参加をめざして関わった手賀沼ふれあい清掃の取り組みです。2010年11月に開催された第33回地方自治研究全国集会(名古屋市)の参加者が、全国で取り組まれている自治研活動に触発されたのがきっかけとのこと。組合員の間にも参加が徐々にではありますが、広がっているとのことでした。自治労千葉県本部は、本年11月の自治研全国集会(佐賀市)で、この2つのレポートの発表を予定しています。
講演会を開催「原発避難者の生活再建へ」(2014/6/14)
東日本大震災から3年が経過しました。福島県では地震・津波の被害のほかに、原発事故にともなう避難が今も続いています。今回の講演会では、福島大学の今井照教授から「震災復興から地域再建へ~原発避難と『移動する村』~」をテーマに、避難の実態、避難者に対してこれから降りかかろうとしている政策的災害の状況、江戸時代に実際に存在した「移動する村」からヒントを得た「多重市民権」という新しい政策制度を設計する必要性などについて、丁寧に話をしていただきました。
福島県の面積は東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県を合わせた広さに匹敵し、2014年3月現在、福島県民の避難者約13万2千人のうち、避難区域(2市9町村)からの避難者は約83,900人に及んでいます。原発事故の避難者にとって、「事故の終息」とは元の地域に住民が戻ることを意味します。しかし、放射性物質の完全除染がむずかしい現状では、「帰りたいけど帰らない」という熟慮の末の選択をせざるを得ない多くの避難者が存在していると、今井教授は指摘しています
2014年4月1日から避難区域の一部が避難解除となりましたが、元の地域に帰っているのは対象者の1~2割にとどまっています。今後、避難解除が順次行われるようになります。現行の制度の取り扱いでは、避難解除となった瞬間に「帰りたいけど帰らない」避難者は、「勝手に避難している。勝手に仮設住宅に住んでいる」とみなされ、このままでは住まいを失うなど明日の生活を脅かされるという、いわゆる政策的災害が避難者に襲いかかろうとしています。
今井教授は、これらのことの解決策として、被災者が息をひそめて「避難」している構造を打開し、喫緊の課題として「住まいの再建」にむけた賠償と長期的課題としての政策制度設計(多重市民権)を提案しています。いままでの自然災害とは違い、復興までに数十年以上の長い期間を要する原発災害については、自然災害を対象とした現行の災害対策制度では対応しきれない状況が生まれようとしています。一刻も早い、原発避難者の生活再建にむけた新たな制度の確立と対策が求められています。
2014年度自治体フォーラムを開催(2014/5/22)
5月22日(木)の午後、千葉県地方自治研究センター主催、連合千葉議員団会議後援の「自治体政策フォーラム」が開催されました。今回の自治体政策フォーラムは、県内の自治体議員の皆さんを対象として開かれ、20名の議員が参加しました。
地方自治を取り巻く環境は大きく変化しており、人口減少や財政悪化の中、難題が山積する自治体政策を切り拓くために欠かせない専門知識が必要とされています。この政策フォーラムは、自治体議会の政策形成と地方財政分析を取り上げ、自治体議員としての政策形成力向上を図るために企画されました。
主催者の高橋秀雄さん(当センター副理事長)の挨拶で開会し、後援して頂いた連合千葉議員団会議会長の佐々木久昭さんから挨拶がありました。 宮﨑伸光さん(当センター理事長、法政大学法学部教授)の第1講演では、「自治体の政策形成と自治体議会の専門性」をテーマに1時間程度の講演をして頂きました。講演の中では、分権改革の進行に伴い自治体議会に求められている政策形成の力をいかにして確保するのか、そのためには何か必要なのかについて、事例紹介がありました。
次の第2講演では、地方財政分析の専門家である高木健二さん(公益財団法人地方自治総合研究所前研究員)から「財政分析から見える千葉県自治体の政策課題」を題に、地方財政の仕組み、地方交付税の算定基準などの制度説明がありました。また、県内54団体の決算カードが収録されたフォーラム資料集を活用し、千葉県・千葉市の決算カードを例に取り上げ、用語の意味や数字が意味する内容など、決算カードの読み方を学びながら、財政分析から自治体の政策課題を抽出する高度かつ専門的な解説がありました。
2つの講演の後、約40分間にわたって2人の講師に対する質疑応答がありました。参加された議員の皆さんからは、地方交付税のあり方、不交付団体が交付団体になった場合の対策、議会討議のあり方のほか、日頃の議会活動・経験から感じた疑問点など、たくさんの質問、意見があり、活発な議論となりました。また、こうした専門的な議論を今後の議会活動に役立てていきたい、新たな知識を充電する場として続けてほしいなどのご要望を頂きました。
当センターは、住民が主役となる地方自治の活性化に向けて、議員の皆さんのご意見・ご提案を頂きながら、今後とも良い企画を考えていきますので、ご協力をお願いします。 参加された議員の皆様、誠にありがとうございました。
「戦後千葉県労働運動史」を無料贈呈します
千葉県労働者福祉協議会が管理していた労働関係の書籍が当研究センターに管理移管されました。移管された書籍のうち「戦後千葉県労働運動史」の残部がありますので、必要とされる方に無料(送料は負担していただきます)にて頒布いたします。当研究センターまで連絡いただければ、送付いたします。
<連絡先> 一般社団法人千葉県地方自治研究センター
電話 043(225)0020 FAX 043(225)0021
高齢者介護めぐって講演会とパネル討論(2014/2/15)
前日からの大雪は降りやんだものの、雪の残る肌寒い2月15日。当センターと自治労千葉県本部共催の講演会が、当初の予定どおり千葉県教育会館で開催されました。今回は、千葉県における高齢者介護の現状と課題に焦点を当てながら、講演とパネルディスカッションが行われました。
はじめに、当センター理事でもある結城康博氏(淑徳大学教授)が、「高齢者を取り巻く地域力の可能性と限界~孤独死防止対策から見えるもの~」と題して講演を行いました。
結城氏は「2010年と2025年の65歳以上人口を比較して、その増加率のトップは沖縄県だが、2位が埼玉県、3位が千葉県、4位が神奈川県と続いている。上位を占めている首都圏3県の中にあって、介護支援体制が一番遅れているのが千葉県。そして、千葉県の中でも、都市化が進んでいる松戸、柏、市川、船橋市をはじめとする東葛地域は独居高齢者が増えており、孤独死も多い。今後が心配される」と高齢化の現状を説明しました。
また、社会保障をになう仕組みについて「社会保障の考え方に自助(本人)・互助(家族や地域)・共助(社会保険)・公助(福祉制度)があるが、現状では自助・互助機能が低下してきている。2015年に介護保険法改正が予定されているが、介護費用の増加を理由に介護保険サービス(共助)も縮小傾向にある。福祉制度(公助)を担うべき自治体は福祉専門職の不足等で現場力は低下している」とし、互助・共助・公助を強化していくことの必要性が指摘されました。
講演後、当センターの申主任研究員をコーディネータに、パネラーとして東出健二さん(自治労千葉県本部退職者会会長・ケースワーカー)、大塚美知雄さん((有)トータル介護サービスアイ代表取締役)、講師の結城教授にも加わってもらい、パネルディスカッションを行いました。東出さん、大塚さんからは独居高齢者・認知症患者の増加等にともない深刻さを増す介護現場の実態が報告されるとともに、脆弱さを増す公的介護制度への危惧と介護支援体制の強化が話されました。
今後ますます深刻化する介護を取り巻く状況の中で、改めて千葉県の地域力(互助)を高めていくことの重要性が浮き彫りになった講演会でした。
自治研センター講演会(2013/10/26)を 中止しました
10月26日(土)に開催を予定していました当自治研センター主催の講演会につきましては、大型台風の接近による交通機関の混乱や自治体職員の待機業務等が想定されるため、中止いたしました。
「地域医療と少子化対策」事業報告会(2013/6/22)
6月22日、連合千葉・議員団会議の主催で標記の報告会が議員団会議の各級議員の皆さんの参加のもとオークラ千葉ホテルで開催されました。「地域医療と少子化対策」の調査研究事業については、2年前に連合千葉・議員団会議が千葉県地方自治研究センターに委託したもので、淑徳大学の結城康博教授を中心とした研究会のメンバーによってその活動が進められてきました。そのまとめとして、本年4月に「医療なくして子育てできず」という冊子を発刊しました。今回の報告会は、研究会メンバーによる講演とパネルディスカッションという形式でその研究成果が発表されました。
議員団会議の佐々木久昭会長の主催者あいさつの後、「昨今の地域医療政策の課題」と題して結城教授が講演。「地域医療と少子化対策」報告書の構成・概要の説明ののち、全国ワースト5~10に入る千葉県の医療の実態の報告や少子高齢化の中での医療の在り方についてお話がありました。
結城康博教授(右)と仲本未央准教授(左)
もう一つの講演は淑徳大学准教授の仲本未央氏が「病児・病後児保育の課題」というテーマで行い、病児・病後児保育事業の経緯、現状や課題について、東京・千葉の施設の調査を交えながら報告されました。
第二部のパネルディスカッションは、コーディネータに結城教授、助言者に仲本准教授、研究会メンバーの4人の議員(県議会議員:石井宏子、天野行雄、網中肇、市議会議員:加瀬庫蔵<銚子>**敬称略**)の皆さんをパネーラーとして、障がい児医療、医療従事者のワークライフバランス、地方財政と医療、銚子の地域医療について報告とディスカッションが行われました。
医療に関してはそれぞれの地域で抱えている問題があり、会場からいろいろな角度から質問・意見が出されました。今回の研究成果が、千葉県の医療問題の解決に役立てられることを期待します。
「安倍政権と地方行財政改革の行方」テーマに講演会を開催(2013/6/15)
昨年12月に政権が再交代し、第二次安倍内閣が発足しました。今回、安倍政権の打ち出した政策が地方行財政にどのように影響を及ぼしているのか等について、神奈川県地方自治研究センターの上林得郎理事長に講演をお願いしました。
上林先生は、「2013年度行財政計画から見えてくるもの」「アベノミクスと地方財政」「道州制基本法と動向」等を中心に、多方面な課題に触れ、示唆に富んだお話をされました。
<講演要旨は以下のとおりです>
安倍政権が国家公務員給与の7.8%カットを地方に押し付けるために、政府に従う地方自治体には地方交付税を加算する措置をとろうとしている。しかし、そのことは、条例で給与を決めるという地方の自主性を否定することはもちろんのこと、全国どこの自治体でも同じ事業ができるようにするために、財源の不足する自治体に支出するという地方交付税制度の本旨をも逸脱している。
また、民主党政権時に「ひも付き補助金は地方自治を侵害する」という地方からの強い声を受けて一括交付金制度を創設されたが、その一括交付金制度を2013年度予算から廃止した。安倍政権になって地方分権が進むかという点からいうと、否定的な見解を述べざるを得ない。
アベノミクスの三本の矢といわれる「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策(公共投資)」「民間投資を喚起する成長戦略」が進行している。エコノミストによって評価が両極端に分かれるが、すでに金融の暴走が始まっており、大規模な金融緩和は財政規律を保てないのではないか。
国土強靭化基本法が国会で審議されている。巨大災害に備えるという誰も反対できない大義名分を掲げているが、土木国家への逆戻りが懸念される。むしろ老朽化したインフラの長寿命化、公共施設の再編が急務である。
道州制基本法を議員立法で国会に提出しようという動きがある。そもそも「何のための道州制か」ということが判然としていない。道州制に対する、国民並びにそこに住んでいる人の合意を得ることは相当むずかしいと思われる。3000万人が住む首都圏をどうするかを考えてみても、難問が山積している。
アベノミクスもそうだが、経済成長がすべてを解決してくれるという発想は時代にそぐわないのではないか。人口減少、とりわけ65歳未満の生産年齢人口が急減していく状況下ではそう考える方が自然だと思う。これからは、IT等の知的産業へのシフト、福祉・教育等の人によるサービス(現物サービス)の拡充が重要だと考えている。
足元の悪い中、講演会に参加いただきました皆さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。なお、今回の講演内容は、本年10月に発行予定の自治研ちばに掲載されます。
**新理事長に宮﨑伸光氏を選出**理事会・定期総会を開催
6月15日の定例講演会に先立って、千葉県教育会館において理事会並びに2013年度定期総会を開催しました。2012年度事業報告、2012年度決算、2013年度事業計画、2013年度予算案が満場一致で承認されました。
また、4月22日に急逝された井下田猛理事長の後任として、当センター副理事長・法政大学教授の宮﨑伸光氏を新理事長に、新理事(事務局長)に宮原一夫氏を選出し、終了しました(役員一覧はこちら)。
「限界労働」に近づく非正規公務員-急がれる処遇改善-自治研センター講演会を開催(2013/02/16)
2013年2月16日、地方自治総合研究所の上林陽治先生を講師にお招きし、「非正規公務員」-公共サービスの再生のために-と題して、講演会が開催されました。
全国の公務職場の実態調査に関わった上林陽治先生によると、全国の「非正規公務員」は70万人(2012年自治労調査)。民間職場と同様に「3人に1人」が非正規公務員となっています。
職種別にみると、学童指導員の92.8%、消費生活指導員の86.3%、図書館員の67.8%、保育士の52.9%、学校給食調理員の64.1%、学校用務員の52.0%、は非正規。もはや、非正規公務員を抜きにしては、公共サービスは維持できない状況といえます。
上林先生の経験から、非正規保育士比率が5割を超えると、非正規保育士がクラス担任を受け持つといいます。
そのような実態にも関わらす、年収は200万円を下回る低賃金に据え置かれ、その業務は年々過重に。また、公務職場の非正規公務員は、「4つの偽装、3つの格差」にさらされ、民間職場以上に厳しい状況に置かれています。公共サービスは非正規公務員の献身的な労働で何とかもちこたえていますが、いまや「限界集落」ならぬ「限界労働」ともいわれています。
解決の第一段階は、まず労働組合に加入してもらい、非正規公務員がかかえる課題を労使共通の課題とすること。暗くならないで、前向きに明るく取り組むことの大切さをやさしく語りかける上林先生のお話が印象的でした(講演内容は、本年6月発刊の「自治研ちばvol.11」に掲載を予定しています )。
今年一番の寒波にもかかわらず、参加いただいた皆さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。
※参考図書として、「非正規公務員」(上林陽治著)が日本評論社から出版されています。
夕張の鈴木直道市長の講演と対談-第8回千葉県地方自治研究集会を開催(2012/09/22)
2012年9月22日、第8回千葉県地方自治研究集会が、夕張市の鈴木直道市長をゲストに招いて、開催されました。
集会は、主催者として自治労千葉県本部の椎名衛委員長と千葉県地方自治研究センターの井下田猛理事長があいさつ。その後、神崎町職労の秋元書記次長から、自治労千葉県本部と千葉県自治研センターが共同で進めている神崎町財政分析等研究会の活動が報告されました。
講演では、市長選挙に立候補した経緯、財政破綻した夕張市の現状、再生に向けた取り組みについて、夕張再生に人生をかけるという鈴木市長が熱く語りました。埼玉県出身の鈴木市長は、周囲の反対を押し切って東京都庁を退職し、2011年4月の統一地方選挙で夕張市長に30歳の若さで初当選しました。
しかし、かつては炭鉱の町として栄えた夕張も、最盛期10万人の人口は現在1万4百人に減少。65歳以上の高齢者と15歳未満の子どもの割合がそれぞれ44.8%、6%と、少子高齢化に苦しんでいます。膨大な借金を抱えている中で、給料4割カットということもあり、309名いた市職員は146名へ半減。
このような困難な中でも、市政改革、市民対話、東京都との連携、国・北海道庁との協議などを通して夕張再生をエネルギッシュに進めていることが話されました。
第二部では、法政大学時代の恩師であり、千葉県自治研センターの副理事長の宮崎伸光教授と鈴木市長が対談。宮崎先生のリードで、鈴木市長の講演内容の理解がさらに深まるものとなりました。
「これ以上、財政再生団体を出してはいけない」という鈴木市長の講演の最後の言葉から、千葉県での地方自治の調査研究活動の重要性を再認識させられた集会でした。鈴木市長の講演内容は、来年2月発刊の「自治研ちばvol.10」に掲載を予定しています。
「地域医療と少子化対策を考える」講演会とパネルディスカッションを開催(2012/08/01)
8月1日、連合千葉推薦議員団会議の主催で表記の講演会とパネルディスカッションが、千葉県労働者福祉センターにおいて開催されました。今回の催しは、千葉県地方自治研究センターが連合議員団会議から千葉県の地域医療の調査・研究を委託されたことを受けて、その中間報告の場として設定されました。
連合千葉推薦議員団会議の佐々木久昭会長の挨拶、淑徳大学准教授の結城康博氏より今回の研究の概要報告の後、早速3人の講師から講演がありました。小児科医の黒木春郎氏は、地域医療を立て直すために「不要不急な時間外診療等を減らし、医師をはじめとした医療従事者がやりがいを持って働き続けられる医療現場にしていくことが大切」「現場をよく知る専門家による大学医学部での地域医療教育を充実させて学生を育てる」「小児医療におけるワクチンの計画的接種が重篤な症状を減らす」等が述べられました。
保育所利用者の立場から、清和大学短期大学部准教授の上村麻郁氏から「病児・病後児保育について」、また、救急救命士の立場から「救急隊の搬送における問題について」それぞれ報告と問題提起がされました。その後のパネルディスカッションでは、参加された県内の市町村の議員の皆さんから、3人のパネラーに対して、様々な多くの質問・発言が寄せられ、地域医療や少子化対策への関心の高さがうかがわれました。
東庄町の岩田町長と井下田理事長が対談(2012/07/25)
7月20日、銚子市に隣接する東庄(とうのしょう)町を訪問し、岩田利雄町長と井下田理事長の対談形式で東庄町の現状や抱える抱える課題を中心にお伺いしました。
対談は、東庄という町名の由来から始まり、町の基幹産業である農業の活性化と後継者をどのように育てていくか、進む高齢化の中で国保東庄病院を中心とした予防医療の充実をいかにはかるか、平成の市町村の大合併の動きの中での東庄町の選択した方向、など多岐にわたりました。
千葉県の町村会会長を務め、本年4月からは全国町村会の副会長に就任した岩田町長。幅広い経験の中からエネルギッシュに町政の今後の発展について語っていただきました。本年10月発刊の「自治研ちばvol.9」に対談内容の掲載を予定しています。
「大阪都構想の現状」テーマに講演会開催(2012/06/16)
6月16日、大阪市政調査会の会長で奈良女子大学名誉教授の澤井勝先生を講師にお招きして、「大阪都構想の現状-橋下市政の6ヶ月-」をテーマに、講演会を開催しました。
現地の大阪で研究活動をしている澤井先生は、昨年12月19日に就任以来、橋下徹市長が進めてきていることを以下のようにまとめています。
第一は大阪府と大阪市の主に広域行政権限の統合・再編、指定都市権限の府への集中。
第二は民営化・市場化・競争原理の活用の推進。
第三には行財政改革と「新しい区移行」をにらんだ市政改革、その先に8から9の区割りで指定都市を「中核市」なみの基礎自治体に分割。
第四に教育基本条例を中心とする教育改革。
第五に対職員、労組対策であり職場規律を成果主義と懲罰システムでつくろうとするもの。
そして、「前の二つはサッチャー以来のプライバタイゼイション、市場原理主義の徹底の流れであり、第4の教育改革はこの流れと日の丸掲揚時の起立と君が代斉唱を職務命令として順守させる流れとの合作といえる」と指摘しました。
今後の動きについて、「大阪の地域特性もあり、大阪都構想はそう簡単に事が運ぶとは思えない。しかし、橋下市長に対する大阪での支持は高く、地域福祉や文化活動への助成の削減、公募区長の導入などにより市政改革は相当に進むと思われる。また、対職員、労組対策として種々のことが行われようとしているが、全国への波及が懸念される」等、大阪で起きていることが一過性のものではなく、引き続き注視していく重要性が述べられました。この講演内容は本年10月発刊予定の「自治研ちばvol.9」に掲載されます。
開催案内はこちらから見られます。→→
第4回総会で全議案が承認されました(2012/06/16)
6月16日、講演会に先立って、千葉県地方自治研究センターの第4回定期総会が開催されました。井下田理事長の挨拶の後、自治労千葉県本部の椎名衛委員長と若井康彦衆議院議員が来賓挨拶。提案・報告された事業報告、決算、事業計画、予算、監査報告、役員体制、のすべての議案が全会一致で承認されました。
千葉市長を交えて大都市問題等で対談実施(2012/03/29)
3月29日、千葉市の熊谷市長をゲストに大阪都問題、大都市制度の諸問題などについて、対談を行いました。対談相手として、東京地方自治研究センターの佐藤草平研究員、司会を網中肇県議会議員にお願いしました。若いフレッシュで斬新な対談となりました。対談内容は6月発行の「自治研ちばvol.8」に掲載されています。
「巨大地震と液状化」で定例講演会を開催(2012/02/18)
2月18日、千葉県労働者福祉センターにおいて自治研センター主催の定例講演会を開催しました。「科学性無視の巨大広域開発への警鐘-巨大地震が物語った液状化・流動化・地波(ちなみ)現象と津波」と題して、筑波大学名誉教授・NPO法人日本地質汚染審査機構理事長の楡井久(にれい/ひさし)先生が参加した会員・市民80名を前に示唆にとんだ話をされました。
楡井先生は、千葉県職員として27年間にわたり地質研究に取り組んだ経験等をもとに、東京湾の埋め立て等により液状化が発生することを当初から訴え続けていたこと、地質・地層の科学的な調査に基づいた液状化対策があまりに少ないこと、「行け行けドンドン」型ではない自然の法則・摂理を読み解き、自然とうまく付合う開発・施策の必要性、など多方面な課題に触れていました。当日の講演会の模様は千葉日報にも取り上げられました(講演会の内容は2012年6月に発行された「自治研ちばvol.8」に掲載されています)。
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神崎町の石橋町長を表敬訪問(2012/02/03)
2月3日、当自治研センターの井下田理事長、佐藤副理事長が千葉県神崎町の石橋町長を表敬訪問しました。今回の訪問は、2012年と13年の2ヵ年で千葉県自治研センターが神崎町の財政やまち興しに関する調査研究活動を予定しており、それに先立って行われました。井下田理事長から、今回の神崎町の調査研究活動の趣旨等について説明するとともに活動への協力をお願いしました。石橋町長から協力いただける旨の快いお話を伺いました。
茂原市の財政分析結果の報告会を開催(2011/11/14)
2011年11月14日、当自治研センターの井下田理事長が茂原市の田中市長を表敬訪問しました。この間進めてきた茂原市の財政分析の調査・研究がまとまったことを受けて、茂原市の協力に対するお礼と報告を行いました(写真左)。
田中市長との会見後に行われた報告会には、茂原市職の役員、茂原市財政担当者、関好治市議らが参加しました。調査研究の指揮にあたった井下田理事長からは、様々な具体的な指標等の説明から「茂原市財政は弾力的な運営がきびしく、自由度が制約されている状況である」ことが報告されました。
また、今後の市政運営にあたって、茂原市の財政状況を広く市民に理解をしてもらい、問題意識を共有化することを通じて、昨今注目されている「新しい公共」「協同」という観点から市民とともに歩む街づくり・市政運営の重要性が問題提起されました。調査・研究にあたってお世話になりました茂原市の皆さん方に感謝申し上げます。→→報告書はこちらから見られます。
「入札改革」テーマに定例講演会を開催(2011/10/23)
格差の広がりや、雇用情勢の悪化などによって社会不安が広まっています。市民の日々の生活を支えている公共サービスの重要性が増している中で、「入札改革、社会的価値の追求と公契約」をテーマとして定例講演会を開催しました。
野田市を先頭に全国に広がり始めた公契約条例の県内の現状について、武藤博己先生(法政大学大学院政策創造研究科教授)の講演を行うと同時に、研究者、自治体関係者、事業者が一同に介してパネルディスカッションを行いました。当日は、会場からも熱心な質問が寄せられました(定例講演会の内容は2012年2月に発行された「自治研ちばvol.7」に掲載されています)。
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定例講演会を開催(2011/06/18)
テーマ:「復興への地方財政の役割」
講師:菅原敏夫(公益財団法人地方自治総合研究所研究員)
定例講演会の内容は「自治研ちば」Vol.6に掲載されています。
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定例講演会を開催(2011/02/12)
テーマ:「問われる自治体議会のあり方」
講師:廣瀬克哉(法政大学法学部教授)
定例講演会の内容は「自治研ちば」Vol.5に掲載されています。
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定例講演会を開催(2010/09/25)
テーマ:「新しい公共 自治体でどう取り組むか」
講師:名和田是彦(法政大学法学部教授 )
定例講演会の内容は「自治研ちば」Vol.4に掲載されています。
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定例講演会を開催(2010/06/19)
テーマ:「2010年度の地方財政計画と千葉県の財政状況」
講師:高木健二(地方自治総合研究所研究員)
定例講演会の内容は「自治研ちば」Vol.3に掲載されています。
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定例講演会を開催(2010/03/13)
テーマ:「検証!民主党政権による社会保障政策のゆくえ-長期的ビジョンの必要性を探る-」
講師:結城康博(淑徳大学准教授)
定例講演会の内容は「自治研ちば」Vol.2に掲載されています。
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設立記念講演会を開催(2009/12/19)
テーマ:「政権交代と公共サービスの再考」
講師:大森彌(東京大学名誉教授)
定例講演会の内容は「自治研ちば」Vol.1に掲載されています。
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