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千葉県地方自治研究センターは、2017年10月に「ちば地域政策研究会」を立ち上げました。この研究会は、高いポテンシャルを有する千葉県の特性を最大限に活かして、他のモデルとなるような特色ある地域政策づくりをめざして、調査研究活動を進めています。
高橋氏の座長で開会。講師の井上定彦氏から「日本社会の縮図としての千葉地域‐少子高齢社会の試練の中で」について説明を受けました。
井上氏は、千葉地域が2010年頃まで他の地方県とは違って産業衰退と人口急減に向き合う必要が乏しかった例外的に幸運な地域であったとしながら、成熟期・定常期を経て、今後急速に人口減少・少子高齢化が進行する中にあって、「個人化」「孤立化」する社会とどう向き合うのか、という視点から、千葉地域の政策課題の推移・経過、人口動態や産業構造の推移・地域比較、人口減少・少子高齢化の中での地域政策の課題等について報告を行いました。
報告に対する主な質疑は以下のとおりです。
○50年前に「確立した個人の市民社会、民主主義」という議論があったが、その帰結が今の日本社会の個人化・孤立化・少子化につながっているのでないか。このことが次の日本の未来につながっているのか、疑問に感じている。「確立した個人の市民社会、民主主義」とは対極ある「子だくさんで不自由だが賑やかで楽しい社会」というのが、現状の日本社会を変革していくイメージとしてありえるのではないか。
○そのような「子だくさんで不自由だが賑やかで楽しい社会」というのは、いつ頃からなくなってしまったのか。
○千葉地域も大企業の進出等が契機となって、地域社会が崩壊していった。「分かち合いの経済学」という著書にもあるが、経済を回す仕組みを誰かが描くことが求められている。新しいコミュニティ作りに寄与するものとして、徳島県で自動車を使った移動スーパー「とくし丸」のようなコミュニティビジネス・ソーシャルビジネスを立ち上げていくが大切である。そのための地域におけるネットワークのシステム設計を行うことのできるキーパーソンづくりが必要となっているのではないか。
その後、事務局から、この研究会例会を今回で終了し、2019年7月を目途に研究会のまとめを行うこととしたい、と提案があり、了承されました。
宮崎氏の座長で開会。野沢秀美氏から「中核市と地方自治について-船橋市の中核市移行の事例から基礎自治体の現在地を考える-」について説明を受けました。
野沢氏は元船橋市職員で、船橋市が平成15年4月に中核市移行した際の担当職員としての経験を踏まえ、中核市制度の概要・課題、千葉県内の中核市の状況、船橋市の中核市移行の経緯や問題点、また環境保全・環境衛生業務や保健所移管に伴う保健衛生業務等における中核市移行のメリット等について報告がありました。
報告に対する主な質疑は以下のとおりです。
○中核市移行準備で千葉県から派遣されていた職員が、中核市に移行した後、船橋市の割愛採用となった職員の労働条件や割愛採用の希望状況などはどうだったのか。
○地域医療計画の策定の権限については千葉県が持っており、政令市や中核市の病院数やベッド数を決めてくるが、補助金などは政令市・中核市を除かれるものがあり、矛盾を感じる。
○今後、船橋市は政令指定都市を目指さないのか。
○今回の問題を考えると、政令市・中核市をかかえる千葉県などでは、基礎自治体からすると県の役割というものがなんなのか改めて考えさせられてしまう。
○中核市移行を進める際の市民参加の手法について、その成果を含めて教えてもらいたい。
その後、事務局からこの研究会の今後の進め方として、当初の計画通り2019年7月を目途に研究会のまとめを行いたいので、今後の研究会例会については1回若しくは2回の開催を予定することとしたい、と提案がありました。
また、座長の宮﨑理事長から、千葉県の地域政策課題を明確にしていくという、ちば地域政策研究会の当初の目的の達成にむけて、次の研究会に引き継いでいきたい、また、自治総研の研究助成費の対象事業に千葉県自治研センターの市町村台帳の作成が承認された旨の補足提案・報告があり、了承されました。
次回の研究会については、井上定彦氏に講師をお願いすることとし、2019年2月15日(金)16時から開催することとしました。
宮崎氏の座長で開会。網中氏から「千葉県議会報告」について説明を受けました。 網中氏の報告要旨は以下のとおりです。
○千葉県議会は定数95のうち、自民党が51を占め、千葉民主の会(国民民主党+無所属)11、公明党8、立憲民主党7と続いている。自民党が8つの常任委員会の委員長・副委員長を独占する安定多数となっている。県議会の議長・副議長についても、自民党議員が独占してきており、議長就任パーティ等によるメリットが大きいとのことである。
○社人研の平成30年の人口推計をみると、2045年には、県内のほとんどの市町村で人口が減少が進み、高齢化率が50%を超える市町村は17を数える。今後、千葉県において、人口減少と高齢化が急激に進行していく。
○日本の医師数は、OECD平均を下回っている。千葉県の人口当たりの医師数、看護師数並びに65歳以上人口当たりの特別養護老人ホーム定員数は全国47の都道府県のうちワースト10に入っている。また、全国平均を100とした場合の、千葉県の訪問看護ステーション数は70程度、訪問診療を実施する歯科診療所数は80弱、在宅療養支援診療所数は40程度と在宅医療資源も乏しい。
○待機児童や児童虐待の状況、官製談合事件についても報告があった。
報告の後、質疑に移り、「医師不足については、医師の偏在が問題だという見解もあり、原因究明が必要ではないか」「医療介護や福祉人材の不足が千葉県内では深刻だ。医療・介護の拡充が千葉県の大きな当面の課題だ」等の質問・意見が出されました。
次回の研究会については、研究会のメンバーの中から講師をお願いすることとし、決まり次第、メンバーにお知らせすることとしました。なお、千葉県地方自治研究センターが本年11月21日に予定するフィールドワークに研究会のメンバーにも呼びかけることとしました。
座長に宮崎氏を選出し、開会。座長から、第2回研究会(3月7日開催)で作成を確認された千葉県内の市町村台帳について、掲載項目として財政状況、選挙結果(行政課題を含む)等を検討している旨が報告されました。
協議事項として、千葉県保健医療大学の成玉恵氏から「在宅医療・看護の実践を踏まえた事例報告と問題提起」と題した講演が行われました。
冒頭、きびしい全国並びに千葉県の在宅療養の現状が報告されました。
2040年にむかって65歳以上人口が増加し続ける中で、独居若しくは夫婦のみの世帯が激増していくとともに、認知症等による医療・介護を必要とする高齢者が大幅に増加する。現在、医療・介護の制度改革にともなって、医療機能の分化が進められ、病院に依存する体制から在宅医療・看護へと転換が進められようとしている。しかし、千葉県が公表している訪問看護の利用見込みから勘案すると、千葉県においては訪問看護ステーションの不足など地域の受け入れ態勢は極めて不十分であり、今後病院・診療所の訪問看護部門を増やす等の対策強化が求められる、等の全国と比べて取り組みが遅れている千葉県の現状が報告されました。
その後、事例報告として、①老老介護から認認介護へ、②看取りをめぐるトピックス、③高度医療を必要とする若年、独居療養者、④小児在宅療養者の現状、の4ケースが取り上げられました。
問題提起として、第一にフォーマルサービスの支援の仕組みづくりが述べられた。フォーマルサービスの限界として、病院での医療看護と違って、訪問看護師による在宅医療・看護の仕事は、先を見越して対応する能力、他職種との連携、制度を熟知していること等が求められ、非常に大変。今後、在宅医療・看護のニーズが激増する中で、医療保険・介護保険で対応できるのか疑問。現状では、まっとうに、かつクリーンに仕事をしている事業所(訪問看護ステーション)が次々と廃業している一方で、粗悪な荒稼ぎをする事業所が増えている。まっとうに仕事をしている事業所を支える仕組みが必要だ、としました。
問題提起の第二として、インフォーマルサービスの支援策について触れられた。フォーマルサービスには限界があるので、インフォーマルサービスを充実させていく必要がある。たとえば、在宅療養している人が家族旅行をしたい場合の付き添い等は、保険外となるので、自費で訪問看護サービスを使うケースが急増している。このようなインフォーマルサービスに関して、自立した事業として立ち行くような仕組みが必要となっている。また、サービス自身も自由度の高いものが求められている、と述べられました。
講演の後、以下のような質疑、意見交換が行われ、終了しました。
○日常生活自立度の主体、基準及び法的根拠は? 訪問看護師がヘルパー的な業務を行った場合は、報酬は出るのか。
○市役所の関係団体で訪問看護ステーションの経営に携わっていた。訪問看護ステーションの仕事は、ドクターとの連携が不可欠なので、小さな事業所は経営が大変という印象がある。
○事例報告は深刻でショッキングな印象を受けた。今後の政策的に対応可能かどうかを判断するうえで、訪問介護の潜在的なものを含む需要のボリュームがどの程度なのか、漠としたものでも良いが教えてもらいたい。
○大都市は共助が薄いが、地方には共助がまだかなり残っている。地域を壊したら、支えあうことはできない。地域においてポジティブで参考になる共助の良い事例があるのではないか。大都市に人を集める一つの解決手段だが、それ以外の解決方法をそのような地域の事例から見つけることができるのでないか。
次回は、網中肇氏を講師に「千葉県がかかえる行政課題について(仮題)」を報告してもらうこととし、7月9日(月)17時から開催することとしました。
チームリーダーの宮﨑伸光氏(法政大学法学部教授)から問題提起を受けました。宮﨑氏は、千葉県内の54市町村のうち2017年に首長選挙が実施された13市町を取り上げ、最近の人口動向、自治体財政の状況並びに直近で実施された首長選挙での候補者の公約・地域での重点政策について報告しました。
問題提起を受けた質疑応答・意見交換の主な内容は以下のとおりです。
○銚子市は、千葉科学大学を誘致したことによって財政は相当きびしくなっている。前回の市長選挙では、洋上風力発電の推進が争点の一つとなったが、現職は漁協と連携を公約で打ち出したのに対し、対立候補は逆に漁協関係者を無視したために反発を買い、現職が大差で再選される結果となった。
○首長選挙の争点にしづらいのかもしれないが、今後、人口が集積している地域では社会資本の老朽化によって地方自治体の財政負担が膨らんでいくことにどう対応していくのかが、大きな問題になってくるのではないか。
○中小規模の地方自治体は相対的に身軽なので、他の地方自治体のモデルとなるような先進的な特色のある取り組みを期待したいが、なかなかそうはなっていない。銚子のポテンシャルは高いので、それを地域全体で引き出していけば、間違いなく銚子の街は活性化する。洋上風力発電は今後間違いなく広がっていくと思う。
○保健師教育で地域診断すると、東葛地域は住みやすい・住みたい地域となり、県東部・県南部との差が大きい。千葉県東部の九十九里地域の人口4~5万人の都市は、住民の顔が見えるため保健事業がやりやすく、とても良い事業を実施している。しかし、そのことが医療の充実等に結びついておらず、現状では住みやすい・住みたい街づくりにつながっているとはいえない。
次回については、成玉恵氏(千葉県立保健医療大学講師)から「在宅医療・看護の実践を踏まえた事例」を中心に報告してもらうこととし、5月後半を目途に開催することとしました。
2018年11月8日(水)、第1回研究会を兼ねて、千葉県地方自治研究センター主催の地震防災フィールドワークに参加しました。あいにくの雨模様の天候でしたが、九十九里地域の津波防災をテーマに、波乗り道路のかさ上げ工事、蓮花寺(山武市)の津波供養塔、東日本大震災による旭市の被災並びに復興状況を視察しました。
千葉県地方自治研究センターは、ちば地域政策研究会の立ち上げにむけて、2017年10月12日に準備会を開催し、11名が参加しました。
事務局(佐藤)が研究会の設立趣旨、調査の目的、期間、方法、メンバー、スケジュール等について概要を説明し、了承されました。また、本研究会の名称を「ちば地域政策研究会」とすることとしました。
今後の進め方について意見交換を行い、概ね隔月で研究会を開催していくこととしました。第1回研究会については、11月8日に開催する地震防災フィールドワーク(主催:千葉県自治研センター)に参加していくこととし、第2回研究会は、千葉県の地域政策の概説をテーマに開催していくことを確認しました。