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2019年9月の令和元年房総半島台風並びに2019年10月25日の大雨等は千葉県に大きな被害をもたらしました。千葉県地方自治研究センターは「ちば地域政策研究会」に「台風被害等調査研究プロジェクトチーム(「台風被害等調査研究PT」という。)を設置しました。防災に対する住民意識の更なる向上をはかって今後の災害に備えるとともに、災害の教訓を後世に残すことを目的として本調査研究を進めていきます。
千葉県地方自治研究センターは、当センター内に台風被害等調査研究プロジェクトチームを2020年8月に立ち上げ、独自の取り組みとして、千葉県内54市町村に対する「地方自治体における災害対応に関するアンケート調査」を行いました。
また、東京・神奈川・千葉県の3つの自治研センターと地方自治総合研究所で構成する東京湾岸風水害被害調査研究会は、鋸南町と南房総市の視察調査(2020年10月・2021年5月)を行いました。その後、千葉県自治研センター単独で、房総半島台風で農業被害が発生した芝山町と2019年10月25日の大雨で水害に見舞われた茂原市のヒアリング調査の実施を計画しました。
しかしながら、「地方自治体における災害対応に関するアンケート調査」は予定どおり実施できたものの、芝山町と茂原市へのヒアリング調査については、2020年の初頭から世界を席巻したコロナ禍が日本で吹き荒れたためについに実施することはできませんでした。
今回の調査研究は予定を大幅に遅れて進めることとなりましたが、ようやく『「令和元年房総半島台風」及び「令和元年10月25日の大雨」等による災害及び災害復興に関する調査研究』との表題を持つ報告をまとめることができました。調査研究をまとめるにあたり、ご協力いただいた東京湾岸風水害被害調査研究会、千葉県内の市町村の関係各位に感謝申し上げる次第です。
2021年8月23日、第2回PT会議を連合千葉第2会議室において開催し、10名が参加しました。報告事項として、東京湾岸風水害被害調査研究会による、鋸南町及び南房総市において令和元年房総半島台風に伴う被災状況のヒアリング調査を実施したことが報告されました。
協議事項として、2020年12月に千葉県内54市町村を対象に「地方自治体における災害対応に関するアンケート調査」を実施した結果概要並びに調査結果のまとめ骨子(案)が報告・提案され、協議を行いました。意見等として、
〇噴火災害については防災計画に未策定の自治体は策定すべき。
〇防災マップ・ハザードマップの作成については、液状化・高潮の被害が想定されると思われる地域において、ハザードマップを「作成していない」と回答している自治体が散見される。いずれにしても、すべての防災情報が住民に各自治体から提供されるべきである。
〇一時期、防災ラジオの普及を行政は取り組んだが、今回の結果をみると、ほとんど普及していないのを、どう総括するのか。
等が出されました。
アンケート調査結果(概要と詳細)については、本日の意見等を盛り込んで、調査に協力してもらった市町村に送付することとしました。今後の調査研究の進め方として、千葉県自治研センター独自の台風被害等のヒアリング調査について、2021年10月~11月を目途に調査対象自治体として茂原市と芝山町を予定し、台風被害等調査研究PTを調査メンバーとして実施したいと提案があり、了承されました。
コロナ禍にともなって、のびのびとなっていた南房総市に対する台風被害のヒアリング調査が5月19日(水)13時から行われました。当日はあいにくの雨でしたが、調査には東京、神奈川、千葉県の自治研センターから7名が旧富浦町役場庁舎であった本庁舎に集まりました。
南房総市からは、お忙しい中、消防防災課の座間好雄課長ほか4名に出席いただきました。南房総市は、2006(平成18)年3月に7町村が合併して誕生しましたが、内房(東京湾)と外房(太平洋)に面する、広い市域を有しています。令和元年房総半島台風は東京湾を通過し、千葉市に上陸するルートをたどったため、南房総市においては内房に面する地域が外房地域よりも大きな被害を受けました。
房総半島台風では、最強クラスの暴風雨による住家、農業用ハウスなどの建物損壊等が多数に及び、かつ大規模の停電が長期間にわたり続きました。暴風によってなぎ倒された倒木が電線を切断したことと、多くの電柱が倒壊したことが停電の主原因でした。また、倒木が道路をふさいだため、その後の復旧作業に多大な困難が生じました。
南房総市の復旧活動では消防団が活躍しました。安否確認については消防団が対応し、9月7日~10月25日までの延べ出動人員は5,065人で組織的に動きました。これらの消防団の活動に対して、消防長官表彰や内閣総理大臣表彰を受けたとのことです。南房総市においては、現地対策本部がその地域のセンターとして区長の集まり等を開催して、各区をまとめ上げており、地域連携という点では鋸南町とは大きく変わっていないようです。「地域のことは地域で」という旧町村時代のコミュニティが残っており、消防団の組織も、旧町村ごとに支団を地元の人で構成しているので、対応もスムーズとのことでした。
広い市域をカバーする大変さをヒアリングのところどころに感じました。今後、旧7町村時代の地域コミュニティを大切にして、地域の自主的な活動をどう伸ばしていくかが重要だと思いました。雨天のため、ヒアリング後の現地視察は中止し、散会しました。
2020年10月15日、ヒアリング調査に訪れた鋸南町役場本庁舎の1階ロビーの一部はいまだに立ち入りができず、昨年の台風被害の生々しさを残していました。
今回の調査には、東京・神奈川・千葉県の3つの自治研センターと地方自治総合研究所で構成する東京湾岸風水害被害調査研究会のメンバーなど10名が参加。2019年9月の令和元年房総半島台風による被害発生状況とその対応、復興・復旧に向けての取り組み、それらを通して見えてきた今後の課題等についての質疑応答、意見交換を行いました。千葉県自治研センターからは台風被害等調査研究PTの3名が参加しました。
鋸南町からは、お忙しい中、総務企画課の平野幸雄課長を含め担当者4名が対応してくれました。冒頭、鋸南町には26の区があり、各区に区長が選出されていますが、災害時に果たした区長の役割等について、お伺いしました。発災当初、猛暑が続き、停電で通信・エアコンが使えず、高齢者等の健康が不安視されていました。そのような中、各区の区長、民生委員、班長が中心となって高齢者等の安否確認や水・食べ物の配布を行ってくれたそうで、濃密な地域コミュニティが築かれていることが伺えました。
また、職員の町内在住率が8割を超えており、発災時に役場への職員の参集率が高く、自分が住んでいる地域の情報を職員が把握していたのも大きかったそうです。このような体制があることが地域の防災力を上げる要因の一つで、併せて、地域の人たちが自主的に動いてくれることが防災力をより引き上げていると思うと語っていました。
ただ、今回のような大規模な被災を受けた際には、現状の100名程度の職員数ではとても手が回りきらず、相模原市、足立区、長野県辰野町から応援の職員が駆けつけてくれたのはとても助かったとのことでした。大きな自治体との相互支援は必要だと思うとのことでした。
鋸南町は合併を選択せずに、現在に至っています。合併をしなかった率直な感想を聞かれ、「鋸南町に関していえば、地域のために頑張るぞという住民の意識は合併した地域よりも高かったと思う」と語った言葉に地域への愛着を感じました。その後、被害が大きかった岩井袋地区を視察し、調査を終了しました。
千葉県地方自治研究センターは、2020年8月26日、第1回PT会議を開催し、10名が参加しました。高橋副理事長の司会で開会。プロジェクトチームのリーダーである若井康彦氏を座長に選出し、会議が進められました。
椎名PT事務局長がプロジェクトの設立趣旨、調査の目的、期間、方法、メンバー、スケジュール等について概要を説明し、了承されました。その後、千葉県内の市町村に対するアンケート調査の内容について、事務局からたたき台が示され、協議を行いました。
まず「アンケート調査の項目に新型コロナウイルス感染症が触れられているが、調査研究の企画としてこの問題をどの程度取り上げるのか」という質問が出されました。この点についてて意見交換を行いましたが、あまり深入りせず防災上の観点からアンケート項目に多少加えていくこととしました。
医療保健分野については、医療圏の設定等の権限を県が有しているため、市町村の裁量で取り組めることは限られることを考慮して、できる限り市町村が答えやすいように具体的な設問としていくこととしました。市町村と医師会が自然災害に当たってどのような協定や連携をとっているか、が一例として示されました。
「福祉避難所に障碍者を受け入れることも想定しているか」「自主防災組織の組織率や訓練の状況」等についても設問してはどうかといった意見が出されました。また、あまり設問を細かくしてしまうと、アンケートの回収率が悪くなるので、ある程度絞ったほうが良い、全体的に、どのような政策提言を行っていくかということをある程度想定をして、「災害の教訓を後世に伝える」という調査研究の目的に合致することを優先して項目に加えるほうがよいのでないか、との指摘もありました。
最後に、「組織としての災害の教訓」を提言することに主眼を置いて、本日いただいた意見を盛り込んだうえで、再度お諮りし、アンケート内容を取りまとめていくこととしました。