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千葉の地域紹介

歴史的資源を活用したまちづくり(香取市)

自治研ちば vol.2(2010年6月)より転載

小野川沿いの町並み

<シリーズ千葉の地域紹介>

…香取市職員組合  執行委員長 吉田 博之

香取市は,水郷地帯の一角を占める風光明媚なまちです。長い歴史に育まれた土地柄でもあり,市内には国宝や重要文化財をはじめとする数多くの歴史的資源が所在します。

まちづくりにおける歴史的資源の積極的な活用は,合併前の旧佐原市時代から実施されていました。その代表的な事例が,今回ご紹介する佐原の町並みであり,また官民協働による取組の成功例でもあります。

佐原の町並みは,河川が物流の大動脈であった江戸時代に舟運で繁栄を極め,かつては「利根川下流随一」と称される河港商業都市でした。しかし,明治期の鉄道開通を契機に衰退が始まり,戦後のモータリゼーション到来がこれに拍車をかけ,昭和50年代には「さわら砂漠」と揶揄されるほどに零落してしまいます。商圏の縮小が著しかったこの当時,官民ともに打開策として構想したのが旧市街地の再開発であり,再開発を阻む古い町並みは負の遺産でしかありませんでした。しかし,幸にも構想が軌道に乗らなかったことで,新たなまちづくりの方法を模索することになります。その契機となったのが,昭和63年に実施した市民意識調査でした。ふるさと創生資金の活用方法を問うこの調査において,地域活性化の資源として佐原の町並みを活用するべきとの意見が大半を占めたため,従来の再開発型から町並み保存型へとまちづくりの方針を大きく転換することになりました。

これ以後,市民団体が主体となった町並み保存運動が展開され,平成4年には「佐原の町並み保存計画書」が旧佐原市に提出されます。これを受けた旧佐原市では,平成6年の佐原市歴史的景観条例の施行とともに,歴史的建造物の修理修景事業を開始。そして,平成8年には関東地方で初めて,重要伝統的建造物群保存地区に選定されます。

現在の町並みは,14年間にわたる修理修景事業によって歴史的景観の回復を果たし,来訪者は年間50万人を超すまでになりました。 以前とは比較にならないほどの活気に満ちた状況は,官民協働で果たした町並み保存型のまちづくりの成果と言えます。

近年では,新たな担い手として大学を迎え,柔軟な発想と方法による空店舗の解消や回遊性向上等に取組んでいます。より良いまちづくりのためには,行政・市民団体・大学の三者が連携し,多様な視点で課題に対処することが必要と確信しています。

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