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活動報告

調査・研究

当センターでは自治労千葉県本部の要請により、県内の自治体(自治労加盟の14団体)について決算カード(2001~2011年度)から職員数、職員給与等の推移を調査し、人件費削減の傾向について、調査を実施しました。調査の取りまとめ(概要)は以下のとおりです。

千葉県内自治体の職員数・給与等の調査結果

いま、本物の労働の実現を

一般社団法人 千葉県地方自治研究センター 理事長 井下田 猛(姫路獨協大学名誉教授)

<一方的な矛盾・憲法侵害の地方交付税の削減・減額措置の強行>

折からの円安・株高・低金利の進行の前に食品やガソリン・電気・ガス料金などの値上げの春が相次いで、家計には痛手・逆風となり景気腰折れの懸念が増幅している。 いま、国は地方公務員給与を本年7月から平均7.8%引き下げるように要請・強行しようとしてきている。地方交付税を地方公務員給与削減に利用することは「地方の固有財源」(平成17年2月15日衆院本会議総理大臣答弁)に矛盾し、憲法92条(地方自治の基本原則)の精神に対して介入・侵害するものである。

しかし、地方公務員はこの10年間に7回に及ぶ人事院勧告で多大の生活悪化を招いている。それでも、地方自治体は平成17~21年の間に職員数を7.5%削減するなどして、独自の人件費抑制、給与減額に当たって自治体財政の健全化に向けて努力してきた。 他方、今回の当自治研センターの調査によれば、加盟自治体の人件費と関わる職員数、職員給料の目減りが著しい、そして技能労務職の減少は一般職員の平均を上回っており、反面消防職員、教育公務員の減少幅は小さく、自治労と関わる組織減が顕著である。一方、扶助費など福祉関連経費と公債費が増大している。

<自治体労働者の賃金とディーセント・ワークとディーセント・ウエイジの実現>

新たに生活保護費の削減にくわえて、地方交付税を減額して自治体労働者の賃金引下げを要請・強行することは先祖返りとなる"人からコンクリート"への「機能的な財政政策」(安部首相)の公共事業予算拡大策に資するものである。

注目したいことは、連年にわたる賃金の抑制がデフレを招いた最大の要因である。自治体労働者の賃金は、地域経済の原資であり地場賃金の土台である。従ってその一方的な賃下げの強行はさらに一層の景気のかげりと悪化を招き、働くものたちに暮らしの厳しさをもたらす。

地方自治体の主要財源は、地方税と地方交付税である。景気低迷のなか地方税収増は期待できず、国が地方交付税を削減すれば住民サービスは必然的に低下する。地方自治が展開するサービス労働は、市民・住民たちが生きいきと生きがいに満ちた生活を豊かにすることを保障する労働である。

数ある職業のなかで地方自治の公務労働に従事している働く者たちは、「働きがいのある人間らしい仕事」(ディーセント・ワーク、1997年にファン・ソマビアILO事務局長提起)の確保と働く者たち「誰もがまともな生活ができる賃金」(ディーセント・ウエイジ)の保障を介して、いまこそ本物の労働を実現させたいと願っている。

急ぐべきは、ソマビアILO事務局長の重く根源的な提言に深く学びたい。そして、改めて地方公務員の賃金削減攻撃に総力を結集して反対・阻止し、ディーセント・ワークの確保を介して、ディーセント・ウエイジの保障の本格的実態化を求めたい。

数字から見た公務員賃金、人件費について

(2001年度から2011年度の決算カードより)

2013年4月
一般社団法人千葉県地方自治研究センター

政府は震災財源の捻出を理由に国家公務員の給与を7.8%引き下げ、同様に地方公務員にも適用するよう地方自治体に要請しています。さらに、人件費削減分を織り込んだ地方財政計画を策定し、地方交付税の削減に踏み込んでいます。

これに対して全国知事会、全国市長会など、地方団体は地方ではすでに内部努力により、人件費削減に取り組んでおり、要請とは名ばかりで地方自治への介入として反発しております。

当センターでは自治労千葉県本部の要請により、県内の自治体(自治労加盟の14団体)について決算カードから職員数、職員給与等の推移を調査し、人件費削減の傾向についてまとめるものです。

<調査項目>

1 総務省公表の決算カード(平成13年度から平成22年度)、千葉県公表の決算カード(平成23年度)から人件費等に関わる項目について抽出し、検証する。

2 性質別歳出から人件費、職員給に関わる項目を比較し検証する。 なお、資料はすべて総務省ならびに千葉県ホームページ公表の千葉県内決算状況による。

<全般的傾向について>

1 人口は東京に近い都市部を中心に微増となっているが職員数は減少し、職員給料も大幅に減少している。県東部や南部の自治体は人口が減少傾向にあり、同じく、職員数、職員給料とも大幅に減少している。

2 性質別歳出のうち、歳出総額は軒並み増加しているが、人件費にかかる総額は大幅に減少しており、歳出に占める人件費の構成比はいずれの自治体も5ポイントほど低下している。

3 人件費の減少に比較して歳出に占める扶助費の割合が10%から20%強へと倍増しており、少子高齢社会を反映し、福祉等に係る費用の増加が顕著になっている。

4 公債費も増加傾向にあり、長年の公共事業の結果による借金返済の増加がめだっている。その反動もあり、近年は普通建設事業費は減少している。

5 職員数の内訳では技能労務職の減少幅は一般職員の平均を大きく上回っており、民営化や事業廃止の影響が色濃くでている。

6 消防職員、教育公務員の減少幅は小さく、自治労に関わる組織の減少が顕著となっている。

<個別自治体の数値について>

個別自治体のPDFファイルに下記のデータを掲載している。

1 性質別歳出の推移(表・グラフ)

2 人口、職員数、職員給料額の推移(表)

3 住民と職員数の推移(表・グラフ)

4 住民百人当たりの職員数と職員給の推移(表・グラフ)

千葉市

1 人口は88万人から93万7千人と5万人強増加し、10年間で約6%の増である。歳出総額は8.2%増加した。

2 職員数の合計は6,753人から5,997人と12%減少、給料の合計は、32%減少した。一人あたりの給料も17%減少している。技能労務職は919人から604人と300人以上減少した。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は、19.9%から15.8%と4ポイント減少した。

4 それに比較して、扶助費は10%から21.4%と大幅増加、公債費も14.3%から15.8%と増加した。普通建設事業費は22.6%から7.9%と低下している。

千葉市のデータ(PDF0.52MB)PDFアイコン

銚子市

1 人口は7万8千から6万8千人と1万人減少、10年間で約15%減少した。歳出総額は4.7%の減少。

2 職員数の合計は840人から629人と33%以上減少、給料の合計は46%以上減少した。一人あたりの給料も約10%減少した。技能労務職も104人から69人と減少した。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は31.2%から25.4%と10年間で28%減少した。

4 扶助費は8.2%から16.4%と倍増した。公債費は7.6%から13.1%と5ポイント以上増加した。普通建設事業費は大幅に減少している。

銚子市のデータ(PDF0.49MB)PDFアイコン

市川市

1 人口は44万7千人から45万8千人と2.4%の微増。歳出総額は18.7%の増加。

2 職員数の合計は3,500人から2,990人と17%ほど減少した。給料の合計は20%減少した。一人あたりの給料も2%減少した。技能労務職は578人から293人と半減した。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は31.3%から23%と8ポイント低下した。

4 扶助費は11.1%から24.2%と大幅に増加した。公債費は3ポイントの低下。普通建設事業費は構成比は減少したが総額は増加。

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船橋市

1 人口は55万人から60万2千人と8.47%増加。歳出総額は23.3%の増加。2005年度から中核市に指定される。

2 職員数の合計は4,046人から3,554人と13%以上減少した。技能労務職は595人から342人と250人以上減少した。給料の合計は30%以上減少した。一人あたりの給料も14.54%減少した。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は30.5%から20.6%と10ポイント低下した。

4 扶助費は11.6%から24.5%と倍増した。公債費比率は2ポイント減少、額は横ばい。普通建設事業費は18.54%増加している、構成比は横ばい。

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松戸市

1 人口は46万4千人から47万6千人と2%の微増。歳出総額は11.48%の増加。

2 職員数の合計は3,217人から2,715人と18%減少。給料の合計は28%以上減少した。一人あたりの給料も8.7%減少した。技能労務職の数は438人から274人と減少した。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は27.2%から21.8%に減少。

4 扶助費は11.2%から28.5%と大幅増加、公債費は減少している。普通建設事業費は大幅に減少している。

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茂原市

1 人口は9万5千人から9万2千人と3.2%の微減。歳出総額は1.3%の増加。

2 職員数の合計は693人から552人と25%以上減少した。給料の合計は32%減少した。一人あたりの給料も5.38%減少。技能労務職は81人から39人に半減した。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は22.5%から19.5%と3ポイント減小した。額は13.5%減少。

4 扶助費は8.6%から18.8%と倍増。公債費比率は横ばい。

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柏市

1 人口は32万6千人から39万6千人と合併の影響もあり、17%増加した。歳出総額は19.6%の増加。2008年度から中核市に指定された。

2 職員数の合計は2,335人から2,405人と微増だが、合併後は200人近く減少した。給料の合計は2.7%の減少。一人あたりの給料も5.7%減少した。技能労務職は460人から215人と半分以下に減少した。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は24.2%から20.3%と4ポイントほど低下した。

4 扶助費は7.4%から21.7%と3倍増。公債費比率は横ばい。普通建設事業費は構成比で半減した。

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流山市

1 人口は15万人から16万5千人と8.9%増加した。歳出総額は15%増加した。

2 職員数の合計は1,063人から930人と14%以上の減少。職員給料の合計は23.7%減少した。一人あたりの給料も8.2%減少した。技能労務職は175人から107人と大幅減少。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は28.4%から20.7%と7ポイントほど低下。

4 扶助費は7.4%から23%と3倍増。公債費比率は4ポイント下がっており、額も下がっている。

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我孫子市

1 人口は12万9千人から13万3千人と3.5%増加した。歳出総額は12.89%増加。

2 職員数の合計は966人から793人と21.8%減少。職員給料合計は31%減少。一人あたりの給料も7.6%減少した。技能労務職は143人から50人と3分の1に減少。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は31.2%から23.3%と8ポイント低下。

4 扶助費の構成比は6.9%から20.2%に3倍増。公債費の比率は1ポイントほど低下している。普通建設事業費は構成比で12ポイント低下、額は半減している。

我孫子市のデータ(PDF0.50MB)PDFアイコン

鎌ヶ谷市

1 人口は10万2千人から10万8千人と5.6%の増加。歳出総額は10%の増加。

2 職員数の合計は750人から643人と16.6%減少。職員給料の合計は27.63%減少。一人あたりの給料も9.4%減少した。技能労務職は50人が22人と半減した。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は27.8%から21.3%と7ポイント低下。

4 扶助費は8.1%から21.71%と3倍増。公債費は構成比は横ばいだが額は増加した。普通建設事業費の構成比、総額とも半減した。

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香取市(合併後の7年分)

1 2005年度に合併により人口は8万8千人で出発したがその後5千人、6%ほど減少した。歳出総額は10.7%増加した。

2 職員数の合計は合併後の797人から648人と23%減少。給料合計は27.3%減少した。一人あたりの給料も3.52%減少した。技能労務職は103人から66人に減少。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は26%から18.5%と7.5ポイント低下。

4 扶助費は10%から16.9%と増加。公債費比率は横ばいだが額は増加した。

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山武市(合併後の7年分)

1 2005年度に合併により人口は6万人で出発したがその後4千人、6.5%ほど減少した。歳出総額は2.6%の増加。

2 職員数の合計は合併後の510人から435人と17.2%減少した。給料合計は同じく16.2%減少した。一人あたりの給料は0.81%の減少。技能労務職は47人から17人と大幅減少。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は22.2%から18.3%と4ポイント下降した。

4 扶助費は5.4%から13.6%と増加。公債費は2ポイントの増加。普通建設事業費の構成比10ポイント低下。額は半減した。

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神崎町

1 人口は6,800人から6,522人と4.2%減少。歳出総額は19%の増加。

2 職員数の合計は80人から67人と13人19.4%の減少。職員給料合計は19.8%減少。一人あたりの給料も0.33%減少した。技能労務職は13人から9人と4人減少した。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は32.3%から20.1%と大幅低下。

4 扶助費は3.1%から7.6%と増加。公債費比率も2ポイントの増加。普通建設事業費は13.1%から6.7%に低下した。

神崎町のデータ(PDF0.48MB)PDFアイコン

芝山町

1 人口は8,600人から7,800人に10%減少。歳出総額は5.4%増加した。

2 職員数の合計は112人から105人と6.6%の減少。職員給料合計額は16.7%減少。一人あたりの給料も9.47%減少。技能労務職は13人から3人に減少。

3 性質別歳出に占める人件費の構成比は22.6%から20.5%に低下。

4 扶助費は2.7%から6.3%に増加した。公債費は率、額とも減少している。普通建設事業費は構成比、額とも減少している。

芝山町のデータ(PDF0.46MB)PDFアイコン

<まとめ>

旧民主党政権は人件費の20%減をマニフェストに掲げていた。また、現政権も民間の賃上げを財界に要請したりしているが、公務員には冷たく、相矛盾した行動をとっている。景気回復のために賃上げではなく、むしろ政権運営の手段として労働者賃金を扱っている。数字で鮮明になっているよう、地方公務員の人件費は人員の減少、給料のダウンでこの10年間すでに大幅に減少している。

景気の底上げを標ぼうする政権として、地場賃金に大きな影響を与える地方自治体の職員の賃下げは景気に大きなマイナスと言わざるを得ない。知事会、市長会が主張するように、地方は自主的な努力をすでに行い、身を削っていると言えよう。性質別歳出の人件費割合の低下は職員の人件費を削って、福祉や借金返済に回している現状を物語っている。震災被災地の例を見るまでもなく、これ以上の職員削減や賃金削減は地方自治体の運営を担う職員のモチベーションの低下など住民サービスの大幅な低下につながることは明白であろう。

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